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[被爆建物を歩く] 海宝寺の山門(広島市中区) 肌で感じる教訓 保存方法探る

 磯の香りが漂う江波(広島市中区)の住宅街に、450年の歴史を持つ海宝寺はたたずむ。木造の山門は築110年。爆心地から約3・5キロで爆風を受けた。

 15代目住職の長門義城さん(52)は、平和学習で寺を訪れる江波小児童にもそのことを伝えている。「被爆当時について説明しながら山門を見てもらうと、子どもたちの表情が変わる。実物を見て肌で感じることがあるのでしょう」。境内の戦没者慰霊碑と併せ、戦争の記憶を伝えている。

 米軍が投下した原爆は江波地区にも大きな被害をもたらした。半壊状態になりながら戦後も持ちこたえた本堂は、1984年に建て替えた。境内の鐘楼も市の被爆建物リストに登録されていたが、2004年の台風で柱4本が崩壊。再建する際、部材の一部を再利用したが市のリストからは除外された。

 唯一リストに残るのが山門だ。老朽化で屋根の保存工事が必要だが、被爆した瓦や木材を再利用せずに新調すれば市の費用補助の対象外。「ロシアのウクライナ侵攻が続くなど、戦争は決して過去でないと痛感する。私たちに教訓を伝える被爆建物を残し続けたい」。悩みながら、方策を探っている。(湯浅梨奈)

(2023年2月27日朝刊掲載)

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