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終結 一刻も早く ウクライナ侵攻1年 平和願い催しや集会 広島

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年となった24日、広島県内では多くの市民が心を一つに戦争の早期終結を願う催しや取り組みがあった。戦禍を逃れて福山市で子どもと暮らすウクライナ人の母親は、長期化の現実を前にやりきれない思いを語った。(下高充生、新本恭子、江川裕介)

 広島文化学園大長束キャンパス(広島市安佐南区)では、ウクライナ中部ジトーミル州の生徒とオンラインでつなぐ催しが開かれた。現地の15歳前後の約10人が今の心境を語り、学生たち約30人が聞き入った。

 ロセンコ・アンナさんは軍用機を目撃。爆発音も聞き「あした何が起こるか分からない。人生は一瞬で変わる」と語った。「恐怖や空襲警報のないこれまでの人生がどんなものだったか、もう覚えていない」などの声もあった。

 催しを企画した伊藤駿講師(30)は「誕生日さえ祝えないなど現実を知った。侵攻が長期化する中で、広島の人たちが関心を持ち続けられるような取り組みを考えていきたい」と話した。

 この日、平和記念公園(中区)内の原爆の子の像にウクライナ、ロシアの平和を願い、両国の国旗の色などにちなむ折り鶴約300羽がささげられた。持ち込んだのは市民グループ「待っとる間に鶴折る会・ヒロシマ」(安佐南区)の代表豊久芳光さん(58)。昨年3月以降、東区のホテルなど3カ所に折り紙を置き、宿泊客たちに折ってもらった。

 これまでも定期的に飾ってきた。豊久さんは「多くの協力に感謝したいが、取り組みが1年続いてしまったことは悲しい。戦争で傷つく同じ市民に一日も早く穏やかな日々が訪れてほしい」と祈った。

 県内の仏教の僧侶やキリスト教の聖職者の有志たち16人は中区の原爆ドーム前で集会を開いた。侵攻による犠牲者を追悼し、平和を願った。

 浄土真宗本願寺派西善寺の小武正教住職(65)はあいさつで「毎日市民の命が奪われ、両国の兵士が殺し殺されている。不条理な死がもたらす悲しみを共有したい」。日本キリスト教団広島南部教会の後藤慧牧師(36)は日本で過ごす避難民に思いを寄せ「この国で健やかに過ごしてもらえるよう心から願う」と力を込めた。集会後、本通り商店街で寄付を呼びかけた。

 「一刻も早く戦争が終わってほしい」。福山市に避難しているフェドロフスカ・ナタリアさん(34)はこの日、中国新聞の取材に応じ、涙を流した。日本語学校に通い「いつか母国で日本語を教えられる日が来てほしい」と願った。

 激戦が続く東部ドネツク州出身。侵攻が始まった時は首都キーウ(キエフ)で暮らしていた。長男(3)とポーランドやトルコを経て来日したのは昨年6月。知人を頼り9月に同市に移った。電気もない地下での暮らしや多くの犠牲者を伝える祖国のニュースに触れるたび、心が痛む。「自然災害と違って戦争は人が起こすもの。とても悲しい。なぜ、やめられないのか」

(2023年2月25日朝刊掲載)

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