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台湾有事 増す岩国の役割 広島湾初 日米が共同訓練 

専門家「国際情勢口実 実施か」
 海上自衛隊と米海軍が27日、初めて広島湾で共同訓練をした。台湾有事を見据え、南西諸島を防衛ラインとする日米の訓練が広島湾に波及した形だ。滑走路と港湾施設を備える米軍岩国基地は戦闘機の出撃に加え、米艦船の拠点として運用が強まる可能性を専門家は指摘する。(有岡英俊)

 海自呉基地(呉市)を母港とする輸送艦おおすみと米海軍のドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイが約1時間、岩国基地沖で訓練。それぞれが搭載したホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)が海上を行き来した。

 自衛隊と米軍は台湾有事に備え、離島の防衛作戦に絞った共同訓練を重ねている。昨年11月には南西諸島を中心に隊員約3万6千人が参加し、艦艇約30隻、航空機約370機で大規模な演習をした。

 今年2月に入り、陸上自衛隊と米海兵隊などが九州・沖縄で共同訓練「アイアン・フィスト」を行っている。この訓練に参加するグリーン・ベイは岩国基地に2回寄港し、米海軍の強襲揚陸艦アメリカは大阪港に現れた。広島湾の訓練も共同訓練の一環とされる。

「使い勝手良い」

 世界にある米軍基地を比較研究する東京工業大の川名晋史准教授(国際政治学)は、海洋で軍事活動を活発化させる中国を念頭に小規模の部隊を島々に分散して偵察・攻撃の拠点にする「遠征前方基地作戦(EABO)」の一環とみる。

 広島湾での訓練について「米軍は大阪を含め、各地のどの施設が使えるかを確認している。海自と共同利用し、港と滑走路が近接する岩国基地は使い勝手がいい。南西諸島の防衛のため岩国や各地で連携を確かめている」と解説する。

 軍事評論家の稲垣治氏も「ウクライナ侵攻や台湾有事の危機感を口実にして、船の往来が多い広島湾で訓練をしても国民の理解が得られると判断したのではないか」と指摘する。

 昨年12月に閣議決定した安保関連3文書は、中国を「最大の戦略的な挑戦」と位置付け、日米同盟の強化を打ち出した。

市民団体は抗議

 広島湾での訓練後、岩国基地の滑走路では、米海兵隊のステルス戦闘機と海自岩国基地の航空機など17機が隊列を組む「エレファント・ウオーク」を実施し、報道機関に公開した。岩国配備の海自第31航空群の開隊50周年を記念しつつ、日米の即応体制をアピールした。

 市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」は訓練後、訓練について国・米軍に抗議するよう岩国市に申し入れた。久米慶典顧問は「岩国基地を拠点に訓練する機会が増え、機能が強まる。攻撃の対象となる危険性も高まる」と危機感を募らせた。

(2023年2月28日朝刊掲載)

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