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[広島サミット5・19~21] 首相、「人類の過ち」の解釈引用 原爆慰霊碑の碑文 惨禍起こさぬ思い 発信は「重要」

 岸田文雄首相は28日の衆院予算委員会で、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返(くりかえ)しませぬから」と刻まれた広島の原爆慰霊碑について答えた。原爆を投下したのは米国だが、誰の過ちか碑文に主語はなく、論争を呼んできた。首相は「政府としてコメントしない」としながらも、人類が責任の一端を担い、犠牲者にわびるよう求めた故浜井信三広島市長の言葉を紹介した。

 5月に広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)で各国首脳に碑文の意味を伝えるよう、立憲民主党の森山浩行氏から求められた。首相は故浜井市長の回想録を引き合いに「碑文の前に立つ人類の一員として過失の責任の一端を担い、犠牲者にわびることこそが世界平和の確立につながるという思いが込められているとされている」と説明した。各国首脳に伝えるかどうかの言及は避けた。

 碑文にある「過ち」を犯したのは誰か。解釈が割れてきたことについて、首相は「碑文論争という形で議論が行われてきた」と説明。主語については、広島市が「すべての人びと」と解説していることを念頭に「意味するのは広島市が作成したものだ」と述べた。

 ロシアが核の脅しを繰り返す現状を踏まえ、広島サミットで平和のメッセージを打ち出す考えを改めて強調。「核兵器の惨禍を二度と起こしてはならないとの思いを世界に向け、G7首脳がともに発信することは重要だ」と訴えた。(中川雅晴)

原爆慰霊碑
 碑文が記された石板は幅124センチ、高さ76センチ、厚さ19センチ。被爆者の雑賀忠義広島大教授(1961年死去)が考案した文字を正面に刻み、52年に除幕された。「過ち」を犯したのは誰かという論争を呼んできた。広島市は83年に慰霊碑近くに置いた説明板で、主語は「すべての人びと」と解説している。

(2023年3月1日朝刊掲載)

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