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第五福竜丸も記述削除 中学生向け 広島市教委 平和教材から

 広島市立校の平和教育プログラムを巡り、小学生向け教材から漫画「はだしのゲン」の削除を決めた市教委が、米国の水爆実験で被曝(ひばく)した静岡県のマグロ漁船第五福竜丸の記述も中学生向け教材からなくすことが1日、分かった。「世界の被曝の実態を確実に継承する学習内容になっていない」と説明している。

 第五福竜丸は1954年3月1日、太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁で水爆実験による放射性降下物「死の灰」を浴び、乗組員23人全員が被曝した。現在の教材では、核兵器を巡る世界の現状を学ぶ中学3年向けの学習で、無線長の故久保山愛吉さんの「原水爆の被害者は私を最後にしてほしい」という言葉を写真入りで紹介している。

 市教委によると、プログラムに関する有識者会議で「福竜丸が被曝した記述のみにとどまる」などの指摘を受けた。新教材では削除し、代わりにビキニ環礁など世界の核実験被害地を地図で記す。指導第二課は「福竜丸は市立中の社会の教科書でも取り上げられており、授業で関連付けて指導できる」としている。

 一方、東京都立第五福竜丸展示館の市田真理学芸員は「福竜丸の記述なしに被曝の実態が伝わるのか。ヒバクシャの苦しみが抜け落ちてしまうような印象を持った」と話している。(宮野史康、山本庸平)

(2023年3月2日朝刊掲載)

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