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峠三吉の遺志 胸に刻む 平和公園で没後70年碑前祭 「原爆詩集」朗読や歌手独唱

 没後70年を迎える原爆詩人峠三吉(1917~53年)の命日を前に「碑前祭」が5日、広島市中区の平和記念公園で開かれた。学生や文学関係者たちが「原爆詩集」の作品を朗読し、死の直前まで反戦反核と平和の尊さを訴えた峠の遺志を胸に刻んだ。(桑島美帆)

 市民団体「広島文学資料保全の会」(土屋時子代表)が企画した。約100人が詩碑前で黙とうをささげた後、同会顧問の水島裕雅さん(80)=千葉県東金市=があいさつ。ロシアによるウクライナ侵攻に触れ「核戦争をほのめかす大統領もいる。峠さんが生きていれば悲しんでいるだろう。われわれが声を上げなければ」と力を込めた。

 原爆文学を研究している広島女学院大3年の桑原希羽(まう)さん(21)と、同級生の石岡莉沙さん(21)が「ちちをかえせ ははをかえせ」で知られる原爆詩集の「序」を読み上げたほか、オペラ歌手の山岸玲音さん(46)が犠牲者たちを悼み独唱した。「八月六日」など3作品の朗読もあった。

 碑を設計した画家の故四国五郎さんの長男光さん(66)は大阪から駆け付け、父親と峠の親交を振り返った。  峠は28歳のとき、翠町(現南区)の自宅で被爆し、目の当たりにした壮絶な光景や憤りを詩作に込めた。49年に「われらの詩の会」を結成。文学仲間とともに反核運動に心血を注いだが、53年3月10日未明、肺葉切除手術の途中、36年の生涯を閉じた。

(2023年3月6日朝刊掲載)

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