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[広島サミット5・19~21] G7史上 今回が最重要 カナダ駐日大使 イアン・マッケイ氏に聞く

核抑止こそ最優先すべき

 カナダのイアン・マッケイ駐日大使が、5月に広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、中国新聞のインタビューに応じた。国際情勢が混迷を極める中、今回サミットは「G7史上、最も重要な会合だ」として、被爆地開催の意義を強調した。(編集委員・田中美千子)

  ―広島での開催をどう受け止めていますか。
 賢明な決断だ。私は何度も広島を訪れている。最初は、下関市の高校に短期留学していた18歳の時だ。2021年には平和記念式典に参列した。人間として大いに影響を受ける場所だ。戦後ずっと、重要なメッセージを発してくれている。5月19~21日、世界は核使用の結末をはっきりと思い起こすことになるだろう。

 私たちは今、重大な挑戦に直面している。日本は北朝鮮の弾道ミサイル発射や中国の海洋進出にさらされている。欧州ではプーチン氏が無謀で許されない戦争を起こし、核の脅しを強めている。G7は今こそ、声を一つに世界へ示さないといけない。違法行為を許さず、断固とした行動をとる、と。

  ―地元は、各国首脳に原爆資料館の見学や被爆者との対話を求めています。
 行かないというのは考えられない。初日に訪れるのでは。個人的には被爆者にも会ってもらいたい。

  ―カナダ在住の被爆者サーロー節子さんは、カナダ政府に核兵器禁止条約の署名を訴えています。「核なき世界」に賛同しますか。
 カナダは核拡散防止条約(NPT)に加盟し、核なき世界の実現を長期目標に掲げている。サーローさんが核廃絶論者として尊敬を集めていることも知っている。とはいえ、ロシアや北朝鮮のように危険な人たちが核を持っている以上、現実的でない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国として、カナダは現時点では核抑止こそ最優先すべきだと考える。

 廃絶というゴールに近づくには、対話を重ねるほかない。だからこそ広島サミットが重要なのだ。世界のメディアの注目を集め、被爆者の体験や思いが語られる。次代のリーダーが下す決断に、何らか影響を与えてくれればいい。

  ―サミットで他にどんな議題が扱われるでしょう。
 気候変動、地域の経済安全保障、サプライチェーン(供給網)再構築に向けた連携などが話し合われるだろう。軍事侵攻などの違法行為を食い止めるため、新興国や途上国をいかに取り込むかというのも、重要な課題だ。

 カナダのフェミニスト外交も紹介したい。わが国は閣僚の5割が女性だ。広島の新たな名誉領事にも昨年11月、地域の女性リーダーの一人、広島経済大の石田優子学長を任命した。女性登用は社会、経済構造に効果をもたらしている。その経験を各国と共有したい。

Ian McKay
 1963年、カナダ・ブリティッシュコロンビア州生まれ。87年から外資系金融証券会社に勤務し、10年以上日本に駐在。2001年以降、カナダ政府や自由党の要職も歴任し、21年8月から現職。

(2023年3月5日朝刊掲載)

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