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林忠彦賞に新田さん サハリン残留韓国・朝鮮人に焦点

 周南市文化振興財団は7日、2022年に発表された写真の最優秀作品に贈る「林忠彦賞」に、東京都三鷹市の写真家新田樹(たつる)さん(56)の写真集「Sakhalin(サハリン)」と写真展「続サハリン」を選んだと発表した。

 受賞作はロシア極東サハリンが舞台。戦後に離れることがかなわなかった残留韓国・朝鮮人と配偶者の日本人、その子孫に焦点を当て、日本語を操る暮らしぶり、寒さ厳しい地の情景を切り取った。写真集は自身初の刊行で110点を載せ、住人たちとの会話も細かに記した。写真展は昨年5、6月に都内のサロンで開き、52点を展示した。

 新田さんは福島県会津若松市出身。東京工芸大工学部を卒業後、都内のスタジオに入社した。1996年に独立し、サハリンを繰り返し訪ねている。「自分が接した時の思いが写真を通してそのまま伝われば。ただ、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻でずっと行けておらず、気持ちの整理はつかない」と話した。

 同賞は周南市出身の写真家林忠彦(1918~90年)の顕彰を目的に91年に創設され、31回目。今回は73点の応募があり、写真家の大石芳野さんたち5人が選考した。(井上龍太郎)

(2023年3月8日朝刊掲載)

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