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連載・特集

廣島 広島 ひろしま はじめに

海陸の要衝生かし近代化

 背後を中国山地、前面を広島湾に囲まれ、発達したデルタの上に栄えた広島。旧石器時代から、脈々と続く時の中で、山と海の恩恵を受け、今日の繁栄を築きあげてきた。

 天正十七(一五八九)年に始まった広島城と城下町の建設が、広島の都市としての第一歩だった。明治維新を経て、明治二十二(一八八九)年の市制施行後は、都市として、また自治体としての近代化が始まった。

 広島は海陸の要衝としての特長を生かし、近代化を遂げた。宇品築港など交通網が整備され、軍都として急成長した。その上に、地場産業や科学技術の発展、繁華街のにぎわいなど多くの歴史を織り成していく。

 昭和二十(一九四五)年八月六日に落とされた原子爆弾は、広島の歴史を断ち切ったかのように見えた。しかし、人々は困難を乗り越えめざましい復興を果たした。現在、「世界のヒロシマ」として国際平和文化都市の歩みを進めている。

 近代とよばれる明治時代以降、私たちを取り巻く社会や暮らしぶり、人々の考え方なども大きく変化した。「今は昔」の言葉どおり、私たちは歴史の流れの中に身を置き、今も刻々と変化する日々を暮らしている。

 このシリーズでは、来年四月一日の市制施行百二十周年を前に、広島市の博物館の学芸員が、市の誕生から高度成長期ごろまでの時代の中で、出会い、関心をもち、心にとめた歴史のひとこまひとこまを紹介していく。

 市誕生と軍都としての歩み、古きよき時代、戦時下、戦後から高度経済成長期という流れで、書き継いでいく予定だ。広島の近代化、そしてその繁栄と暗部、人々の暮らしや技術など幅広い内容をお楽しみください。(広島市郷土資料館学芸員・小林奈緒美)

(2008年3月30日朝刊掲載)

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