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被服支廠巡る有識者懇談会 活用具体策絞らず

 広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」を巡り、広島県の有識者懇談会は13日、「活用の方向性」として交流促進▽平和学習▽広島体感―の3項目を盛り込んだ報告書をまとめた。図書館など活用の具体的なアイデアは並べるにとどめ、絞り込まなかった。

 県庁での最終会合には、オンラインを含め委員7人が出席。「県民・来訪者の交流促進を目指した文化や芸術、生涯学習などの拠点」「広島の自然や歴史・文化、平和などを学べる拠点」「国内外の人々が訪れ、県民とつながり、広島を体感するための拠点」の三つの方向性を了承した。

 有識者懇談会と県民参加のワークショップで出た意見をほぼ反映させ、活用アイデアとして図書館や平和資料館、ホテルなど約30案を例示した。終了後、会長の岡田昌彰・近畿大教授(景観工学)は「出された意見は尊重すべきなので、無視しなかった」と、アイデアを絞らなかった理由を説明した。

 懇談会は2021年11月から6回開いたが、資金面の議論は乏しく、活用策の絞り込みを避けた結論になった。被服支廠で被爆した呉市の中西巌さん(93)は「利活用は財源とリンクする話なので、具体策が決まるまでには時間がかかるのだろう」とし、今後の議論の進展に期待した。

 県は1990年代から利活用策の検討を続け、博物館や美術館などの構想が浮上しては断念してきた経緯がある。県は23年度、国や市と費用負担も含めた議論を始めるが、活用策の結論を導き出す見通しは立っていない。(河野揚)

(2023年3月14日朝刊掲載)

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