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「黒い雨」癒えぬPTSD 広島市が調査結果公表

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島市は6日、被爆者や「黒い雨」体験者の心理影響調査の1次解析結果を原子爆弾被爆実態調査研究会で公表した。専門家は、原爆投下から60年以上が過ぎても「阪神大震災の被災者に匹敵する心的外傷後ストレス障害(PTSD)が認められる」と解説した。

 調査は昨年6月末から11月末に市内と周辺で実施。調査用紙を郵送した3万6614人のうち、2万7147人が回答した。PTSDの度合いは(1)体験を思い出すと、その時の気持ちがぶり返す(2)体験を思い出させるものには近寄らない―などに該当するかどうかを確認し、値を出す「IES―R」という専門手法で分析した。

 その結果、被爆も黒い雨も体験していない人との比較で、直接被爆者は12・798▽黒い雨の「大雨地域」にいた人は6・524▽「小雨地域」にいた人は9・693―それぞれ数値が高かった。分析した東京都精神医学総合研究所の飛鳥井望所長代行は「阪神大震災や、JR尼崎脱線事故の被災者の値に匹敵する」とした。

 精神ストレスの要因では、直接被爆者の55・7%、黒い雨の降雨地域にいた人の38・5%が「放射線による病気の不安がある」と回答。「差別・偏見を強く感じた」も直接被爆者で17・9%に上り、戦後体験の影響も大きい。

 市は今後、回答者のうち891人が応じた面接の結果を精査し、本年度中に報告書を作成。黒い雨の小雨地域を被爆者援護法の「健康診断特例区域」に加えるよう国と協議をする際に、役立てる。

(2009年7月7日朝刊掲載)

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