×

ニュース

「空白の天気図」世界を再現 展示室改装の平和祈念館 きょうから企画展

 原爆投下直後の広島地方気象台員たちの奮闘を描いたノンフィクション「空白の天気図」にちなんだ企画展が15日、広島市中区の国立広島原爆死没者追悼平和祈念館で始まる。展示室の改装に合わせて、祈念館が主催。気象観測者の視点を通じ、被爆から約1カ月後に台風に襲われた当時の状況を伝える。2024年2月29日までで、無料。

 1945年9月の枕崎台風の被害を掘り起こした柳田邦男氏の著作と気象台員たちの体験記を基に、約30分の映像を企画展用に制作。壊滅的な被害を受けた広島で観測を続行した気象台員たちの様子を「欠測しますと、何十年と観測したのが無駄になるんです」などの言葉を交えて振り返る。新設した大型スクリーン(縦2・4メートル、横4・2メートル)で上映する。

 枕崎台風が広島を襲った際の雨量計の記録紙など約10点も展示。作中に登場する気象台技術主任の北勲さん=当時(34)=たち6人の遺影も、遺族から提供を受けて新たに登録した。

 開幕に先立ち、14日に報道向けの内覧会があり、訪れた柳田氏は「核戦争廃絶や災害防止、さまざまな面でお役に立てば」と願った。久保雅之館長は「気象観測の専門家たちの観測力と記録力を通じ、当時の状況を描いたところを見てほしい」と来場を呼びかけている。(小林可奈)

(2023年3月15日朝刊掲載)

年別アーカイブ