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社説・コラム

社説 中国のロシア接近 武器支援は許されない

 中国が、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの協力関係を一層強めようとしている。3期目に入った中国の習近平国家主席は来週にも訪ロし、プーチン大統領と会談すると伝えられる。

 ウクライナ侵攻はロシアによる一方的な侵略戦争である。市民を含む多くの犠牲者を出している。一日も早くやめさせるために米欧をはじめ国際社会が結束、行動する中、中国の真意を見極めねばなるまい。

 先進7カ国(G7)首脳は先月下旬、ウクライナ侵攻から1年に当たって出した声明で、中国を念頭に第三国に対し、ロシアへの物的支援を停止するように要求した。中国がロシアへの武器供与へ踏み出すとの見方があるためだ。  戦争終結に向けた努力に逆行するものだ。国際秩序を守るために、中国は自重し、ロシアのウクライナからの撤収へ向け、国際社会と足並みをそろえることが求められる。

 これまで中国はロシアによる侵攻を支持せず、中立の立場を見せてきていた。だが、ブリンケン米国務長官は先月、中国がロシアに対し、武器提供を検討しているとの情報がある―と指摘した。殺傷力のある武器やドローンなどとみられる。

 またロシア、イランと合同の軍事演習を中東オマーン湾で始めた。両国と軍事面で連携していく意思の表れとすれば、ロシアへの武器供与も十分に考えられる。

 だがそれは戦争を泥沼化し、米欧との代理戦争の構図へと向かわせるものだ。決して許されない。

 苦戦を強いられているロシアは武器不足に陥っているとみられる。また米欧などの制裁によって市民生活への影響も出ていると伝えられた。

 だが西側諸国の企業が相次いで撤収したロシアの都市に今、中国の企業が進出しているという。一時は不足していた物資も現在では入手できるようになったようだ。

 このような中国の動きは、米欧によるロシア制裁を無力化させるものだ。ロシア社会に厭戦(えんせん)の機運を生じさせるどころか、戦争を続行させる後押しとなりかねない。

 米欧とロシアが対峙(たいじ)している隙に、中国は米国と並ぶ大国の地位確立を進めている。

 7年にわたって断交中だったイランとサウジアラビアの関係正常化を実現したのも、中国だった。中東には米国が長年関与してきたが、その指導力低下が印象づけられた。ロシアにも仲介する余力はなかった。

 「善意の信頼できる仲介者」の役割を果たしたと、中国は誇っている。両国の関係正常化はイエメン内戦の終結へ結びつく可能性もある。「一帯一路」など自国の権益に資する思惑としても評価、歓迎される働きである。ならば、ウクライナ侵攻においても役割を果たせるはずだ。

 プーチン氏をいさめ、撤収を促してこそ「善意の信頼できる仲介者」だろう。習氏はウクライナ・ゼレンスキー大統領との電話会談も模索中とされる。

 逆に武器供与など支援するなら侵略戦争を認める国として、信用を失うのは間違いない。

 西側の民主主義とは距離を取るとしても、大国としての地位を望むのなら、大局観に立った働き掛けが問われる。

(2023年3月17日朝刊掲載)

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