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道切り開く女性にエール 山田火砂子監督 広島で25日2作品上映 91歳 先人の歩み掘り起こす

 道なき道を歩み、自分らしく生きることを諦めなかった全ての女性にささげたい―。映画製作という男性中心社会で半世紀以上闘い続ける山田火砂子(ひさこ)監督は、国内の現役女性監督最年長の91歳。女性の地位向上に尽くした先人を発掘する映画を相次いで発表している。「われ弱ければ 矢嶋楫子(かじこ)伝」「一粒の麦 荻野吟子(ぎんこ)の生涯」を25日、広島市中区の県民文化センターで上映し、山田監督が舞台あいさつする。(渡辺敬子)

 常盤貴子主演の「矢嶋楫子伝」は三浦綾子の小説が原作で、キリスト教女子教育の礎を築いた楫子の波乱の生涯を描く。酒に依存し暴力を振るう夫と離縁し、41歳で教員になる。93歳で亡くなるまで、公娼制度の廃止や女性参政権の実現に力を尽くした。石黒賢や竹下景子が好演する。

 「荻野吟子の生涯」は、34歳で女性初の開業医として国に認められた吟子を若村麻由美が演じる。夫に性病をうつされて出産できず離縁された経験から、男性しか許されなかった医学校で学び、女性たちを支える道を歩む。山本耕史や佐野史郎が演じ、音楽はジャズピアニストの渋谷毅。

 子育てをしながら、夫の故山田典吾監督が立ち上げた独立プロ「現代ぷろだくしょん」にプロデューサーとして参加したのは40歳手前。「ずいぶんいじめられた。でも映画好きだから、しつこく粘ってやり抜いた」と笑い飛ばす。60歳を過ぎて監督に挑み、アニメ2本を含む9本を手がけた。現在も新作を準備中だ。

 典吾監督の実写版「はだしのゲン」3部作や「白い町ヒロシマ」にも参加し、広島への思い入れは深い。山田監督は「女性が立ち上がれば日本は変わる。子育てを終えた女性が映画を見て、私も頑張ろうと気持ちを奮い立たせてくれればうれしい」と呼びかける。

 「矢嶋楫子伝」は午前10時、「荻野吟子の生涯」は午後1時15分から上映。作品ごとに1500円(前売り1200円)、大学生1200円~小学生500円。現代ぷろだくしょん☎03(5332)3991。

(2023年3月18日朝刊掲載)

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