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届いた1世紀前の軍隊手帳 初めて知る祖父の足跡 福山の西山さん 感謝 送り主捜す

 福山市駅家町の西山光雄さん(72)の元に、亡き祖父糸一さん=1977年に死去=の「軍隊手帳」が届いた。福山を拠点とした旧陸軍歩兵第41連隊に入隊した17年ごろに配布されたとみられ、広島県世羅町役場に匿名の手紙と一緒に届いた。西山さんは「優しかった祖父について分かる資料。見つけてくれた人にお礼が言いたい」と送り主を捜している。

 軍隊手帳には、入隊日や活動記録、生年月日などが記されていた。昨年6月、出身地の世羅町役場に届いた。添えられていた手紙には「車の解体中に車中から出てきた」とあったが、送り主の名前や連絡先はなかった。西山さんは「こんなものがあるなんて知らなかった。祖父は車に乗らない人だったのに、なぜ車中から見つかるのか」と首をかしげる。

 手帳には、住所は世羅郡三川村(現世羅町)で「大正六(1917)年十二月一日徴兵トシテ歩兵第四十一連隊第一中隊ヘ入隊」とある。その後、演習のため島根県や兵庫県に派遣され、19年11月に兵役を終えたとみられる。

 「私にとっての祖父は軍人ではなく、魚取り名人だった」。糸一さんは幼い西山さんの手を引き、芦田川で何度もアユやウナギを取ってみせたという。進軍ラッパを練習した、上官に命じられて川で魚を調達した…。糸一さんの兵役中、世界は第1次世界大戦のさなかだったが、時々語る思い出話から戦禍の物々しさは感じられなかったという。

 糸一さんはその後、中国配電(現中国電力)の前身の広島電気に就職。定年退職後は土木会社を興し、80歳で亡くなった。

 元マツダ社員の西山さんは手帳の送り主を捜し、車の解体業者などにも聞いてみたが、手がかりはないという。「手帳で祖父が軍隊で何をしていたのか詳しく分かった。感謝を伝えたいので、心当たりのある人は連絡してほしい」と願う。西山さん☎090(2866)3658。(松本輝)

(2023年3月18日朝刊掲載)

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