×

ニュース

岸田首相のウクライナ訪問 核廃絶議論に生かして 被爆者ら

「広島サミットで主導を」

 岸田文雄首相のウクライナ訪問とゼレンスキー大統領との会談を受け、22日、中国地方の被爆者や市民たちから一定に評価する声が上がった。広島市で5月にある先進7カ国首脳会議(G7サミット)の議長として、早期終戦や核兵器廃絶の議論を主導するよう求めている。

 広島の被爆者団体トップたちは平和記念公園(広島市中区)で、核兵器禁止条約への署名・批准を政府に求める署名活動中に地元首相の「電撃訪問」に言及した。

 広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(81)は「大きな決断が必要だっただろう。その度胸でサミットも成功に導いて」と期待。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(78)も「サミットでは一日も早く戦争を終わらせ、核兵器をなくすための話し合いを」と望んだ。

 市民にも同様の反応があった。来月から海外でボランティア活動をする安佐南区の只野杏奈さん(28)は「ウクライナで現地の実情を見聞きせずにサミットの議論をリードできない。今回の訪問を核廃絶や停戦につなげてほしい」と語る。

 また、両首脳は共同声明で戦争犯罪や残虐行為の不処罰に加え、ロシアの核兵器使用の威嚇を容認できないと非難。福山市の大学2年桑田大成さん(20)は「現地で、ロシアの侵攻が間違っていると毅然(きぜん)とした態度で発信したのはよかった」と受け止めた。

 ただ、日本以外のG7首脳は既にキーウ(キエフ)を訪れており、岸田首相は最後だった。山口市の自営業の70代男性は「サミット議長国として必要に迫られたのだろうが、もっと早く行くべきだった」と指摘。一方、国会の事前承認を得なかった経緯に、呉市の無職佐藤圭介さん(86)は「支持率上昇を狙っての訪問だと思うが、国会に報告もせずに行くのはどうかと思う」と批判した。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」の森滝春子顧問(84)は岸田首相がゼレンスキー大統領に広島サミットへのオンライン参加を要請した点を懸念。「西側諸国の結束を示す場になりかねない中、ロシアを刺激して核使用への緊張を高めるのでは」との見方を示した。

(2023年3月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ