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拘置所壁画 保存策探る 広島市中区 作者遺族らの会 発足式

 広島拘置所(広島市中区)の建て替えで撤去される外塀の壁画を巡り、制作した東区出身の洋画家の故入野忠芳さんの遺族や教え子でつくる保存の会の発足式が26日、中区であった。壁画の移設など、保存に向けた手法を話し合った。(石井千枝里)

 入野さんの妻泰子さん(72)=東区=たち13人が参加した。現物保存を検討する市の方針を踏まえ、移設先などを議論。壁画にある江戸時代の広島城下の情景に合わせ、広島城の近くを望む声が出た。陶板画にして残す選択肢も挙がった。いずれも高額な費用がかかるため、資金調達にクラウドファンディング(CF)を活用する意見があった。

 外塀に描かれた壁画は縦約2メートル、全長約200メートル。入野さんは広島城築城400年を記念した市の依頼を受け1989年に完成させた。73歳で亡くなる2013年まで約5年間、闘病しながら修復に取り組んだ。

 法務省は24年度以降、老朽化した拘置所を隣接地に建て替え、外塀を取り壊す計画。泰子さんたちは昨年10月、市に要望書を提出して保存の会を設立した。

 壁画は修復完了から10年たち、一部にひび割れや色あせも生じている。会は速やかなデジタル保存と併せ、4月中に市へ要望書を再び提出する予定。泰子さんは「デジタル保存のその先にある現物保存に向けてどう動くか考えていきたい」と話した。

(2023年3月27日朝刊掲載)

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