×

ニュース

広島市長選告示 3陣営 舌戦スタート 平和都市の未来 どう描く

 26日に告示された広島市長選は、4選を目指す無所属現職の松井一実氏(70)に、共産党広島県委員会書記長で党新人の高見篤己氏(70)たち2人が挑む構図になった。初日から、松井氏は与野党の国会議員たちの加勢を受け組織力を示した。高見氏も地方議員選の立候補予定者と共闘姿勢をアピール。それぞれ支持拡大を求めて街へ繰り出した。(野平慧一、川上裕)

 中区の稲荷大橋西側緑地帯であった松井氏の出陣式には自民、立憲民主、公明3党の地元国会議員や県議会、市議会の両議長、知事たちが出席。財界人も参加した。自民党県連会長の衆院議員は「いよいよ決戦の時。絶大な信頼を得て勝ち抜こう」と呼びかけた。

 選挙戦は、「市長与党」を組む市議会会派の自民党市民クラブや公明党、市民連合の市議たちも支える。その一人は「3期12年の安定感がある。長く続けられるからこそ、サッカースタジアム建設など事業が前に進められる」。松井氏は午後、JR緑井駅(安佐南区)、横川駅(西区)で相次ぎ街頭に立ち、まちづくりの実績をPRした。

 対する高見氏。中区の原爆ドーム北側で開いた出発式には、31日告示の県議選、市議選に市内から立候補を予定する共産党公認の全9人が顔をそろえた。マイクを握った現職市議の一人は、「一丸となって全員当選を目指す」とトリプル選の相乗効果を期待。現市政に批判的な複数の市民団体の幹部も顔を見せ、支援する構えを見せた。

 高見氏が立候補表明したのは告示10日前。初日は中、東、南区へ精力的に遊説した。共産党県委員会内に擁立断念論もあっただけに、別の現職市議は「決断してもらって良かった。市立中央図書館の移転など、現市政の強引なやり方は許せない」と力を込めた。

 無所属新人でサイエンス作家の大山宏氏(74)は、政党の支援を求めず独自の戦いを進める。

3候補第一声 届け出順

松井一実氏(70) 無現

地域共生型社会目指す

 私たちは大きな変革期にある。少子高齢化や人口減少、多発する自然災害、新型コロナウイルスをはじめとする感染症、核兵器を巡る国際情勢の混迷など、さまざまな課題に直面している。3期12年の成果を踏まえ、50年、100年先を見据えて発展できるまちづくりを深めたい。

 「鳥の目」で人口200万人を維持する広島都市圏構想を展開し、「虫の目」で地域コミュニティーの活性化に注力してきた。市街地や周辺、中山間、島の地域特性を踏まえながらまちづくりをしてきた。その上で「心の目」。平和文化を振興し、平和だなと思えるまちにしたい。

 その際、生活を支える公共交通がコミュニティーの活性化に役立つよう確実に組み替えていく。二つの視点にかなった対策を、国の政策の動向を踏まえながら的確にまちに投影させる。持続と循環を可能にするため、財政的な裏付けをした上で、共助、協調を基調とする地域共生型社会の形成を目指す。

 平和首長会議は加盟都市1万まであと少し。ヒロシマの力を世界中に広める。世界に誇れるまちづくりへ、引き続き挑戦させてほしい。(野平慧一)

大山宏氏(74) 無新

選挙の常識を打破する

 核戦争がいつ始まってもおかしくない現状において、特効薬的な施策を提案する。まず、自民党の麻生太郎副総裁を全権大使として北朝鮮の平壌に送り込む。拉致被害者全員を帰してくれたら、お返しに、北朝鮮と日本は相互不可侵条約を締結する。

 その後、バイデン米大統領に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と相互不可侵条約を結ぶように促す。さらに先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、米国とロシアとの相互不可侵条約を結ぶよう提案する。軍拡競争は終わり、軍事費の削減で余った金を各国とも経済対策に振り向けられるようになり、平和な世界が一気にやってくる。

 選挙には金がかかるという常識を打ち破る。投票率が40%を切るような選挙結果では、民主主義国家と言えないのではないか。金に頼り、組織力に大きく頼った候補者が勝利する現行の選挙の体制自体がそもそもの問題点ではないか。

 本来、上に立つ人は、なりたい人ではなく、なってほしい人が選び出される体制が、民主主義の理想の姿だ。投票所が設けられたら投票は義務だと考え、有権者は投票所に足を運ぶ習慣を身に付けるべきだ。(宮野史康)

高見篤己氏(70) 共新

暮らし守る市政を実現

 市民の暮らしを守る市政実現のために全力を尽くす。「子育てにお金がかかる」「戦争の足音がして心配だ」という声が聞こえる。市民の声に応える市政になっていない。統一地方選はこうした政治を変える絶好のチャンスだ。

 第一に、平和や核兵器廃絶の問題で国に物を言う市政に切り替える。広島湾で日米共同の軍事演習が行われても今の市長は何ら抗議しない。私は戦争する国づくりにきっぱり反対する。政府へ核兵器禁止条約の署名を強く訴える。G7広島サミットも活用し、核兵器廃絶を世界へ発信する。

 二つ目に、大型開発優先を改め、暮らし、福祉、教育を大事にする。広島駅南口の再開発など大型開発へ湯水のようにお金をつぎ込んでいるが、自治体は開発会社ではない。放課後児童クラブ(学童保育)を4月から有料にするというひどい話もある。重視するのは子育て応援の三つのゼロ。小中学校の給食費、高校卒業までの医療費、放課後児童クラブを無料にする。

 国民健康保険料などの引き下げにも取り組む。物価高で苦しむ中小企業に支援を強める。市長が変われば暮らしが変わる。押し上げてほしい。(川上裕)

有権者の声

物価高に目配りして 核廃絶へ行動力期待

 1票を託す判断材料を示して―。26日に幕を開けた広島市長選で、有権者たちは、地域経済の活性化や平和発信の強化を巡る論戦を立候補者たちに期待した。

 「小麦や卵が値上がりするのに、賃金は上がらない。物価高対策に目配りしてほしい」。佐伯区の看護師上岡睦子さん(57)は、新型コロナウイルス禍と物価高騰の「二重苦」が家計を直撃する中、経済対策を関心事に挙げた。

 緩やかな人口減少に転じた中国地方最大の都市の将来を憂うのは、中区の伊ケ崎栄治さん(67)。「中心部のにぎわいが少なく、魅力がないから人口が流出しているのでは。広島らしさを追求してほしい」

 夫婦で共働きという東区の会社員渡辺貴広さん(28)は子育て支援策の充実を求める。「子どもは欲しいが、お金を確保できるのかという不安がある。まずは市がしっかり子育てを支える姿勢を打ち出してほしい」と注文した。

 5月には市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)がある。ウクライナに侵攻したロシアが「核の脅し」を続ける中、中区の服部治枝さん(70)は「『核兵器を絶対になくす』と世界のトップに訴える行動力をみせてほしい」と望む。

 一方で、西区の会社員市村優佳さん(26)は「同世代で選挙の話題は出ない。若者向けの施策が少ない」と指摘する。若者の関心を喚起するような訴えや工夫も、立候補者たちに求められている。

(2023年3月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ