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広島市長選告示 118万人市政 継続か転換か 交通や大型事業 論戦静かに開幕

 118万人都市のリーダーを選ぶ4年に1度の広島市長選が26日、幕を開けた。3人による争いの軸になるのは、4選を目指す無所属現職の松井一実氏(70)と、共産党新人の高見篤己氏(70)。市政の継続か転換かを懸け、14日間にわたる論戦を展開する。(野平慧一、川上裕)

 「生活を支える公共交通をコミュニティーの活性化に役立つものに確実に組み替えていく」。松井氏は中区の出陣式で、市が検討する路線バスの共同運営システムを念頭に、高齢化が進む地域の移動手段として、公共交通網を維持する重要性を訴えた。

 一方、高見氏は市が関わる大型事業に、批判の照準を絞った。中区での第一声では、JR広島駅南口(南区)の再整備や広島高速5号二葉山トンネル(東区)の建設工事に触れ「湯水のようにお金をつぎ込んでいる。自治体は開発会社ではない」と語気を強めた。

 初日は、それぞれの主張の発信に注力。論戦がかみ合ったとは言い難く、市が決めた市立中央図書館(中区)の広島駅前への移転計画でもすれ違った。

 現在地建て替えを含めた再検討を唱える高見氏は、中区の街頭演説で「市民の声を聞かず移転を強行しようとしている」と批判。一方の松井氏は図書館移転で「平和文化の情報拠点として機能の充実強化を図る」と公約するが、第一声や街頭演説では触れなかった。

 2人は第一声の場にはそれぞれ支持者を集めたが、その後の遊説先の聴衆はまばら。足を止める市民の姿はあまり見られなかった。舌戦は期待できるのか―。第一声を見届けた市議の一人は「なかなか争点がはっきりしない」と指摘し、立候補者たちの今後の応酬に期待した。

 無所属新人の大山宏氏(74)は中区や南区を回り、投票を呼びかけた。

2候補 慰霊碑に献花 平和記念公園

 広島市長選に立候補した松井一実氏と高見篤己氏が26日、中区の平和記念公園にある原爆慰霊碑を相次いで訪れた。ロシアのウクライナ侵攻など緊迫した国際情勢が続く中、平和都市のリーダーを目指す決意を誓った。

 松井氏は第一声後に訪問。観光客たちの長い列ができた慰霊碑前に妻と2人で並び、花を手向けた。取材に「世界は不安をかき立てる状況だが、多くの人が平和な世界を望んでいる。この地に来るとその思いを確認できる」と話した。

 高見氏も原爆ドームでの出発式後に献花した。「ウクライナ情勢に乗じて岸田政権は軍備拡張に乗り出しており、平和外交の堅持を求める。核兵器をなくしていこうという世界の大きな流れを前に進められるように頑張りたい」と語った。(和多正憲)

(2023年3月27日朝刊掲載)

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