イラクの被害教訓 被爆地から反対を 英が劣化ウラン弾供与決定 HANWA・森滝顧問に聞く
23年3月26日
英政府がロシアの侵攻を受けるウクライナに劣化ウラン弾の供与を決めたことに対し、広島でも批判が強まっている。「放射能兵器」の使用で何が起こり得るか。被爆地からすべきことは―。2003年6月、イラク戦争で使われた劣化ウラン弾の被害調査を現地で行った「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」の森滝春子顧問(84)=広島市佐伯区=に聞いた。
劣化ウラン弾の使用は土壌や水の汚染を招く。戦争が終結しても復興が住民の健康被害を伴うことを恐れる。決して使わないようウクライナ政府に訴えたい。欧米各国が主力戦車を供与するとしきりに報道されているが、使われる弾薬の真の実態にも私たちは目を向けなければならない。
一方、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合、本部ドイツ)は、英国を非難する当のロシアがすでに使っていると指摘している。怒りでいっぱいだ。
核兵器や核燃料用にウランを濃縮した残りを弾芯に使う劣化ウラン弾は、放射性物質は核兵器より少ないが人間と環境への影響は深刻。イラク戦争が開戦した20年前、痛いほど知った。
陥落後の首都バグダッドに入り、米軍に破壊されたイラク軍の戦車からちりや砂を収集。住民の尿なども採取した。広島大や金沢大で分析してもらうと、ちりに劣化ウラン弾の微粒子が混じっていた。尿からも劣化ウランを検出した。
それに先立つ湾岸戦争では米英が劣化ウラン弾を使った。住民は白血病、がんや先天性の障害に苦しんでいた。多くは子どもで、悲惨な姿を現地で知り衝撃を受けた。またも米軍が使ったのがイラク戦争だった。
自国の兵士も放射線被曝(ひばく)と重金属の中毒に侵されているのに、使用国は被害の存在を認めない。広島と長崎では、原爆投下後の放射性物質を含む「黒い雨」を浴びる、ちりを吸う、あるいは水を摂取したことによる低線量・内部被曝の影響が過小評価されてきた。構図は似ている。
劣化ウラン弾は非人道的、とされることを保有国は恐れている。禁止条約が必要なのは核兵器だけでない。そう力の限り訴えてきたが、まだ足りない。被爆地から「劣化ウラン弾反対」の声を結集したい。(金崎由美)
(2023年3月26日朝刊掲載)
劣化ウラン弾の使用は土壌や水の汚染を招く。戦争が終結しても復興が住民の健康被害を伴うことを恐れる。決して使わないようウクライナ政府に訴えたい。欧米各国が主力戦車を供与するとしきりに報道されているが、使われる弾薬の真の実態にも私たちは目を向けなければならない。
一方、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合、本部ドイツ)は、英国を非難する当のロシアがすでに使っていると指摘している。怒りでいっぱいだ。
核兵器や核燃料用にウランを濃縮した残りを弾芯に使う劣化ウラン弾は、放射性物質は核兵器より少ないが人間と環境への影響は深刻。イラク戦争が開戦した20年前、痛いほど知った。
陥落後の首都バグダッドに入り、米軍に破壊されたイラク軍の戦車からちりや砂を収集。住民の尿なども採取した。広島大や金沢大で分析してもらうと、ちりに劣化ウラン弾の微粒子が混じっていた。尿からも劣化ウランを検出した。
それに先立つ湾岸戦争では米英が劣化ウラン弾を使った。住民は白血病、がんや先天性の障害に苦しんでいた。多くは子どもで、悲惨な姿を現地で知り衝撃を受けた。またも米軍が使ったのがイラク戦争だった。
自国の兵士も放射線被曝(ひばく)と重金属の中毒に侵されているのに、使用国は被害の存在を認めない。広島と長崎では、原爆投下後の放射性物質を含む「黒い雨」を浴びる、ちりを吸う、あるいは水を摂取したことによる低線量・内部被曝の影響が過小評価されてきた。構図は似ている。
劣化ウラン弾は非人道的、とされることを保有国は恐れている。禁止条約が必要なのは核兵器だけでない。そう力の限り訴えてきたが、まだ足りない。被爆地から「劣化ウラン弾反対」の声を結集したい。(金崎由美)
(2023年3月26日朝刊掲載)