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外交交渉進展に期待 島根県 あす「竹島の日」式典

 日韓両国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島(トクト))をめぐって県は22日、条例で定める「竹島の日」の式典を松江市で開く。安倍晋三首相の靖国神社参拝などを受け日韓関係が冷え込む中、主催する県は「国に問題解決を促す機会」との立場を貫く。解決を図る取り組みは依然、国より県が先行しており、県民は現状を打開するための外交交渉の進展を政府に求めている。

 今回で9回目を迎える式典。竹島が属する隠岐の島町から元小学校教諭の杉原由美子さん(70)が出席する。韓国が実効支配した1954年以前の町民と竹島との関わりを描いた絵本「メチ(アシカ)のいた島」を昨年2月に自費出版した。

 「自分にできるのは問題を広く知ってもらうこと」と出版後、県内外の小学校などで約30回の読み聞かせを重ねた。出席を前に20日「日本の領土という事実を発信し続ける意味で式典は重要」と語った。

 条例制定は政府による県への竹島編入から100年となった2005年にさかのぼる。その後12年まで、問題解決に向けた情報発信や啓発活動は県が一手に担ってきた。国は13年に初の本格調査に乗り出したが、拓殖大の下條正男教授(日本史)は「あまりに表層的。本気で解決する意志がみえない」と手厳しい。

 下條教授が座長を務める県の竹島問題研究会は今月、竹島の解説本「竹島問題100問100答」を発行。韓国の主張への反論にまで踏み込んだ。「最も重要な歴史的事実を掘り下げ、提言も盛り込んだ」と下條教授。「本来は国がやるべきだ」と付け加えた。

 式典では県が、国際司法裁判所への提訴など外交交渉の進展を政府に求める。溝口善兵衛知事は17日の記者会見で、問題解決には「日韓が政府レベルで話をするのが最も重要」と強調したが、安倍政権では一度も実現していない。

 政府は今回、昨年に続き政府代表の内閣府政務官を派遣する。実効支配の影響で日本海の好漁場でのズワイガニ漁を制限されている隠岐島漁連の浜田利長会長(75)は「政府から出席する以上、交渉進展という実益を得るための対応を考え、早く実行してほしい」と訴えている。(樋口浩二)

竹島
 島根県・隠岐諸島の北西158キロに位置し、東西二つの島と岩礁から成る。総面積は0・21平方キロ。韓国が1954年から警備隊を常駐させ、灯台やヘリポートを建設するなど実効支配を続けている。

(2014年2月21日朝刊掲載)

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