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安保環境受け 基地活発化 米艦載機移転5年 岩国市長に聞く 国に求めた振興策 前に進む

 岩国市の米軍岩国基地に空母艦載機約60機が移り、30日で5年となった。所属機は約120機と倍増し、基地周辺の騒音は大幅に増えた。外来機の飛来や米艦船の寄港も相次ぐ。基地を巡る動きや市の姿勢について福田良彦市長に聞いた。(有岡英俊)

  ―艦載機移転の影響をどう考えていますか。
 5年間艦載機の動きと影響を分析してきた。滞在期間や運用で騒音状況は大きく変わる。毎年、硫黄島での陸上空母離着陸訓練(FCLP)前後の訓練を岩国で繰り返す4、5月は増大する。2021年度は例年より1カ月早く艦載機が帰還したため特にひどく、12月に空軍機が飛来して訓練した影響も大きかった。

  ―外来機の飛来や大型艦船の寄港が増えています。
 日本の周辺を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している。軍種を超えた一体的な運用が進み、基地が活発化している。

機能は変わらず

  ―3月上旬にオーストラリア空軍機と海上自衛隊が部隊交流しました。
 中国、北朝鮮の脅威を見据え、日米同盟を基軸として同志国とも対処能力を高める動きと理解している。基地は有事にならないために連携する存在でもある。

  岩国基地の機能が強まっていませんか。
 部隊や所属機の交代によって住民の生活環境が悪化するかどうかが問題だ。国際情勢を受けて活発になっているが、空軍機の飛来や艦船の寄港は一時的で、機能が強まっているとは判断していない。

  ―騒音が急増し、生活環境が悪化しているのでは。
 騒音を軽減する対策に力を入れている。防音工事の補助対象は住宅だけでなく事務所・店舗にも広がる見通しだ。国から予算措置を受け、市民の安全や暮らしやすさを支える施策に取り組んでいる。

  ―米軍再編交付金の後継制度が22年度に始まり、新たな負担を呼び込む恐れはありませんか。
 基地はあり続け、現状の騒音と負担が続く。後継制度は国防への貢献を受け止めてもらったもので、新たな負担を強いられるものではない。

  ―別の基地関連の交付金も3億円増える見通しで、なし崩し的な基地の機能強化につながりませんか。
 外来機の飛来など新たな動きは一時的と判断しているが、不安に思う市民の声も根強い。艦載機移転で市内には1万人以上の米軍関係者がいて、地域の振興策や交流事業などで市の持ち出しも増えたので増額を国に求めた。生活に影響があれば言うべきことは言ってきている。

協定改定 本気で

  ―17年6月に艦載機受け入れを表明しました。当時の判断をどう考えますか。
 苦しみ抜いて決めた。市長に就任した08年に43項目の安心安全対策と六つの地域振興策を国に求め、進展があったので受け入れた。43項目は8割が達成か進展中となり、振興策も前に進んだ。判断に誤りはなかったと考えている。

  ―今後、解決すべき課題は何ですか。
 昨年12月に市内で海兵隊員によるとされる車の盗難事件があった。損害賠償の迅速化などで課題が残る。日米地位協定の改定に向けあらゆる機会を通じて日米両政府に要請している。本気で取り組んでいく。

(2023年3月31日朝刊掲載)

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