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社説・コラム

社説 プロ野球開幕 新井カープ 躍進に期待

 プロ野球はきのう、新球場のエスコンフィールド北海道であった日本ハム―楽天のパ・リーグ1試合で開幕した。セ・リーグとパのほかの4球団はきょう、公式戦初戦を迎える。

 就任1年目の新井貴浩監督率いる広島東洋カープは、リーグ2連覇中のヤクルトと開幕カードを戦う。4年連続Bクラスからの巻き返しがなるか。何より新井カープがどんな野球を見せてくれるのか、楽しみだ。

 日本の野球が世界を驚かせた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表「侍ジャパン」が米大リーグのオールスター級選手をそろえた米国を破って世界一に輝いた。スピード、パワー、技術、そしてチームのために戦う姿勢。どれもが野球の醍醐味(だいごみ)を感じさせ、子どもたちは目に焼き付けた。

 その興奮が冷めやらぬ中で迎える開幕である。プロ野球でもWBCのような白熱のゲームを見たい。代表選手は所属チームを引っ張り、プレーでも魅了してほしい。野球人気の低迷が叫ばれる中、球界全体の活性化につなげてもらいたい。

 スタンドでの声を出しての応援が2019年以来、解禁される。無観客や観客制限など、新型コロナウイルス禍でさまざまな制限を受けてきた。観戦スタイルにもようやく「日常」が戻ってくる。

 マツダスタジアムでも応援歌を口ずさみ、ハイタッチで喜び合うカープファンの姿が見られる。4年ぶりに大声援に包まれてプレーできる幸せを選手は実感するはずだ。球団経営にもプラスの効果があろう。

 加えて、カープが広島にある意味や、野球というスポーツの価値を再認識するシーズンになりそうだ。

 ファンはリーグ3連覇の中心にいた新井監督のチームづくりや采配に期待を膨らませる。チームだけでなく、ファンも「家族」と称して一体感を生み出してきたからだ。カープが広島の街と共にあることを、新井監督は現役の時から体現してきた。

 「褒めて伸ばす」指導が印象的だ。ドラフト下位で入団し、人一倍の努力ではい上がってきた。伸び悩む選手に寄り添い、助言する姿がキャンプで見られた。これまでカープにはいなかったスタイルの指揮官である。

 オープン戦は12球団で最下位と精彩を欠いた。レギュラーを脅かす若手の台頭がなかったのが心配な点である。3連覇中は、けがや不調の主力に取って代わる選手が次々と現れた。勝ちを追い求めながら選手を伸ばしていく。そんな役割が新井監督には求められよう。

 残念ながら前評判は決して高くない。粘り強く戦い、混セの状況に持ち込みたい。チームの躍進と成長に期待し、声援を送り続けたい。

 新井カープの船出に合わせるようにきょう、旧市民球場跡地に「ひろしまゲートパーク」がオープンする。その中の商業施設では、カープの歴史や市民球場の記憶をたどる展示が開かれる。

 原爆からの復興の象徴として誕生した「市民球団」の歩みに触れてみてはどうだろう。選手にも応援する市民にも「絶対諦めない」が根っこにある。応援で心を一つにする野球の楽しさを、街の元気につなげたい。

(2023年3月31日朝刊掲載)

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