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旧呉海軍の遺構 進む解明 築102年の造船部庁舎で広工大生 完成時期や外壁・増築

 呉市の旧海軍施設の研究を進めている広島工業大(広島市佐伯区)の学生が、旧呉海軍工廠(こうしょう)造船部庁舎(呉市昭和町)の詳細な完成時期を特定し、構造などと合わせて調査結果をまとめた。れんがの外観をした築102年の建物。現在はIHI呉総合事務所別館として使用されている。(仁科裕成)

 同庁舎は、大正期に同工廠内の高台に建設された。コの字形をした3階建て、延べ約1900平方メートル。大和ミュージアムなどによると、戦艦大和などの船体部分を担当した造船部の事務所や会議室などが入っていた。戦後も米国や日本の民間の造船会社などが利用した。

 同大大学院2年木戸勇之介さん(24)と光井周平准教授(建築構造)たちが、東京の防衛研究所で資料を見つけた。同庁舎の完成時期をこれまで考えられていたより約1年遅い、1921年3月と特定。向かい合う鉄筋コンクリート造りの造機部庁舎(現・同事務所本館)と同時期だったことが分かった。

 戦後に製作されていた図面なども調べた結果、外壁は造機部庁舎と違い、れんが造りだったことも判明。また、3階の一部は25年に増築され、2階までとは違う鉄骨造りとなっている。

 初期の設計段階では、2階建てだったことも突き止めた。木戸さんは「戦艦建造が盛んになる中、造船部の人員増を見込んで建物の拡張を図ったことが、複雑な構造を生んだ要因ではないか」と分析。れんがから耐震性の高い鉄筋コンクリートへと建築が移行しつつあった時代背景も影響しているとみる。今後の研究は後輩が引き継ぐという。

 調査を基に関係者たちは現地で増築部分などを見て確認した。参加した市民団体アーキウォーク広島(中区)の高田真代表は「大変珍しいハイブリッドの造りで、デザインも洗練されている。関東大震災前の日本の近代建築様式の移り変わりを伝える貴重な建築だ」と話した。

(2023年4月2日朝刊掲)

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