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子どもへの証言 継承を 被爆者の故川本省三さん 三次でしのぶ会 伝承者ら思い出語り合う

 原爆で家族6人を奪われ孤児となった被爆者で、昨年6月に88歳で亡くなった川本省三さんをしのぶ会が1日、戦時中に川本さんが学童疎開していた三次市廻神町の善徳寺であった。被爆者に代わり証言活動をする被爆体験伝承者たち20人が広島市内などから訪れ、在りし日々の思い出を語り合った。(林淳一郎)

 満開の桜が彩る境内にある本堂。川本さんが袋町国民学校(現袋町小、広島市中区)6年生だった1945年4~8月、男子児童約50人と寝起きしたという。

 8月6日の原爆で両親ときょうだい4人を失った川本さん。自身も3日後に広島へ戻り、入市被爆した。2000年代半ばから自らの体験を語り、善徳寺が子どもたちを対象に毎夏開くサマースクールでも証言活動に励んだ。

 しのぶ会には、疎開中に川本さんが通った神杉国民学校(現神杉小)で同級生だった藤川寿雄さん(89)=三良坂町=も参加。本堂で全員そろって経を唱え、冥福を祈った。長谷川憲章住職(54)がプロジェクターを用意。サマースクールで証言する川本さんの写真や動画を映し、それぞれが深めた親交をかみしめた。

 藤川さんは「川本さんの証言活動には強い気持ちが込められていた。子どもたちに託した思いが、たすきのように受け継がれてほしい」と願った。被爆体験伝承者の若山隆英さん(76)=呉市=も「自分で未来を開くんだと、川本さんは伝えていた。そのメッセージをつないでいきたい」と話していた。

(2023年4月2日朝刊掲載)

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