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ひろしまノート 正式改訂 広島市教委の平和教材

 広島市教委は2023年度から市立の全小中学、高校の平和教育プログラムで使う教材「ひろしま平和ノート」を正式に改訂した。小学生向けは、従来方針通り漫画「はだしのゲン」を削除し、被爆者の家族が記憶を語り継ぐ活動の紹介に変えた。全項目の7割を見直し、ヒロシマの「継承と発信を重視した」としている。(宮野史康)

■小学校

「ゲン」各場面は削除

 原爆で引き裂かれた家族の絆を学習する際に、旧教材で引用していたゲンの各場面を「漫画の一部では被爆の実態に迫りづらい」として掲載を見送り。原爆投下前日に家族写真を撮った被爆者が両親と妹3人を失った体験と、娘が語り継ぐ取り組みに差し替えた。

 平和への願いに関し、ひろしまフラワーフェスティバル(FF)が始まった経緯を学ぶ内容も「被爆の実態に気付く学習になっていない」として削除。新たに被爆ピアノにまつわる動画を作った中学放送部の取り組みを加えた。

■中学校

 1954年に太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁での米国の水爆実験で被曝(ひばく)した漁船第五福竜丸の記述をなくした。一方、核実験場などを示した世界地図と、46年にビキニ環礁であった核実験の写真を掲載した。

 ほかの新規の内容では、核軍縮を巡る世界の動きに絡めて核兵器禁止条約を紹介。原爆の惨状を取材した元中国新聞記者・大佐古一郎さんが、発行できなかった45年8月7、8日付の新聞を被爆35年後に作った逸話も取り上げた。

■高校

 米国在住の被爆2世の女性が記した父親の被爆体験記を引用。女性が体験を受け継ぎ、実話に基づく映画をつくって世界に発信した意義を考える内容にした。片や「はだしのゲン」作者の故中沢啓治さんの講演記録を紹介する箇所は、従来の2ページから半減した。

■経緯

 市教委は13年度に「ひろしま平和ノート」を導入。19年度から有識者会議で見直しを検討してきた。23年2月にゲンの削除方針が明らかになると、全国から市教委に撤回を求める意見が相次いだが、3月29日に改訂内容を正式に決めた。

 市教委指導第一課は「旧教材は発信の学習が弱いという課題があり充実させた。被爆者が高齢化し、社会情勢が変化する中、ヒロシマの心を引き継ぐ重要性は増している。新たな教材で平和について自分で考え、行動できる人材を育てたい」としている。

(2023年4月5日朝刊掲載)

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