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社説・コラム

『潮流』 広島の集合知

論説委員 高橋清子

 広島はどんな都市を目指せばいいのか。そんな直球の議論に交ぜてもらった。3月下旬、官民で市中心部のまちづくりを進める広島都心会議のイベント「都市toデザイン」があった。会社員や経営者、行政職員、研究者たち約30人が小グループで語り合った。

 「平和文化を『創造』できる都市」「イノベーションを起こし、人が集まる場所」。共感し、多様な視点に気付かされた。私は「市民が社会課題を変えられる都市」と提案した。事務局は一つの統合ビジョンを示し、次の行動につなげるという。楽しみである。

 広島都心部はサッカースタジアムをはじめ箱モノの建設や、一帯の再開発が目覚ましい。それなのにと言おうか、近年は若者を中心にした人口流出が政令指定都市の中で目立つ。広島の価値を生かし切れていないとの意識が参加者に共通する。自分ごととして何らか行動したい思いも、だ。

 企画ディレクターは、ビジョンは「集合知の中からしか生まれない」と議論を締めた。「集合知」とはつまり、まちづくりは市民、行政や企業など立場を超えた対話が出発点というメッセージだろう。人口減少をかいくぐり、持続可能な都市をつくる鍵だと。

 イベントの3日後、広島市長選が告示された。争点を自分なりに「誰が集合知を生かせるリーダーか」に据えて、選挙戦を見つめている。あすの投票日を前に広く市民の関心を集めているとは言い難い。

 3候補のうち4選を目指す現職は支持者向けの街頭演説が大半で、新人2人を含め交流サイト(SNS)の活用は低調だ。首長選は行政トップに就こうとする政治家が声を聞き、施策に生かす対話の場でもあるはず。これでは距離が遠のく。

 市民を広島のまちづくりのプレーヤーとして見ているのか。次の市政運営を問いつつ1票を投じたい。

(2023年4月8日朝刊掲載)

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