×

社説・コラム

社説 チャットGPT 立ち止まり安全性点検を

 人工知能(AI)を使った対話型ソフト「チャットGPT」を利用する人が世界で急増している。米国の新興企業オープンAIが開発したソフトである。インターネット上のデータを学習し、質問を入力すると自然な文章で回答してくれることが話題となった。

 だがこのテクノロジーに対して問題点や危険性を指摘する声は少なくない。とりわけ、子どもの学習などへの影響は大きいと考えられる。個人情報の取り扱いにも懸念があり、使用を規制する国もある。

 日本でも政府が活用を検討するほか、導入を進める企業の動きがあるが、まずは安全性の点検が先ではないか。私たちの社会への影響を見極め、活用は慎重に進めるべきだ。

 「インターネットの登場を超えるインパクト」とも言われるチャットGPT。昨年11月に一般公開されて半年ほどながら、急速に普及している。

 膨大な量のデータを収集、学習し、質問や相談を打ち込めば滑らかな文章で答えてくれる。文章の要約や小説の創作をしたり、絵を描いたりもする。

 開発競争は激しく今後も進化と普及が進みそうだ。普及によって人は創造的な仕事やレジャーに多くの時間を費やせる時代が来るともいう。しかし、さまざまな点で問題が指摘される。

 まず誤った情報を含む回答や攻撃的表現での応答をした例があることだ。ネット上の真偽が不明な情報、フェイクニュースも取り込んでしまうためだ。ネット上の個人情報も学習データに含んでおり、プライバシー侵害などの懸念がある。

 試験問題に答えさせ、論文を書かせることもでき、悪用の恐れがある。チャットGPTが作成した論文は「盗作」として認めないとする学術誌もある。

 もし子どもが学習に使えばどうなるか。例えば読書感想文でチャットGPTに作者や作品を示して頼めば瞬時に書いてくれる。大学では既に学生がリポートを作成した例があるという。

 文章を書く力は付かず、自分で考えるという学習への姿勢や意欲を見失わせる恐れがある。

 学校でどう取り扱うか、文部科学省は指針を作成する。教師が生徒を評価することも難しくなりかねず、急ぐ必要がある。

 このように社会の議論が追いつかないまま、急速に普及する技術に対し、開発を一時停止すべきだとの声が上がっている。AI研究者や開発への出資者ら当事者からである。

 危機管理のもろさなどを理由に各国で規制する動きもある。イタリアは個人情報収集の懸念から当面使用を禁止した。

 一方、日本では活用へ前のめりな姿勢もあり、気がかりだ。

 河野太郎デジタル相は、チャットGPTを中央省庁での文書作成に生かせないか検討するという。西村康稔経済産業相も、国会答弁の作成などでの活用を探る考えを示した。

 今月末、先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合が群馬県である。日本は議長国として、AIの有用性やリスクに関する議論の主導が求められる。

 日々進化する高度なテクノロジーをコントロールし、うまく活用できるのだろうか。便利な半面、大きなリスクがありはしないか。一度立ち止まって自ら考える必要がある。

(2023年4月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ