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社説・コラム

天風録 『G7広島サミットまで1カ月』

 温暖化対策が進むと期待していた人には肩透かしだったのではないか。先進7カ国の大臣会合のトップを切って、環境やエネルギーの担当相が会合を開いた。年限を示した石炭火力発電の早期全廃は合意できず、共同声明に盛り込めなかった▲ブレーキを踏んだのは議長国の日本だった。何せ近年は消極的な国に贈られる「化石賞」の常連で国際的に悪名が高い。今回の振る舞いは、恥も外聞もなくなった証しなのかもしれない▲G7の「同床異夢」は、福島第1原発事故を巡っても表面化した。処理水の放出に向けた透明性のあるプロセスを歓迎する―。それを声明に入れたい日本の思惑に、脱原発を成し遂げたドイツが待ったをかけた。福島の教訓を生かしているのは一体どっちか▲G7会合のクライマックスのサミットまで、あすで1カ月。被爆地に集う首脳たちが「核なき世界」への展望をどう切り開くか。原爆資料館を視察し、被爆証言をしっかり聴かなければ、同じ夢を見ることはできまい▲もちろん、首脳たちの安全確保が大前提だ。そのため、多少の窮屈さは住民も納得するだろう。肝心の核問題で一歩踏み出せるか。肩透かしを食らうのだけはごめんだ。

(2023年4月18日朝刊掲載)

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