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サイバーや遠隔地 警戒を 公共政策調査会・板橋功研究センター長に聞く

首相演説会場爆発 サミットのテロ対策は

 岸田文雄首相の遊説先で爆発物が投げ込まれた事件を受け、広島市で5月にある先進7カ国首脳会議(G7サミット)のテロ対策をどうするか、改めて問われている。公益財団法人・公共政策調査会の研究センター長で、危機管理に詳しい板橋功氏に受け止めや課題を聞いた。(中川雅晴)

  ―今回の事件をどう見ていますか。
 警察は迅速に容疑者を確保し、爆発した際には首相は逃れていた。やるべき警護はやっていた。だが、それでも事件が起きた点は重く受け止める必要がある。現職の首相が狙われたのは昨年の安倍晋三元首相の事件とは異なる点だ。行政府の長が負傷すれば国内が混乱し、外交や安全保障上の問題が出てくる。混乱に乗じて他国から攻め込まれる可能性も否定できない。

  ―広島サミットまで約1カ月。影響はありますか。
 今回は不特定多数の有権者と接する選挙でのこと。サミットで市民は首脳に近づけない。サミットの要人警護と事件を結びつけて考える必要はない。

 ただし、(ゼレンスキー大統領を招待する)オンライン会議や、各国の報道陣が集うメディアセンターの回線がサイバー攻撃を受ける懸念はある。主要駅や商業施設などの「ソフトターゲット」が狙われる可能性もある。2005年に英国で開かれたサミットでは開催地から離れたロンドンで自爆テロがあった。

  ―ロシアによるウクライナ侵攻が続く中でのサミット開催となりそうです。
 G7各国はロシア侵攻を非難し、経済制裁もしている。親ロシア派は反感を抱いているだろう。警察は複数方面を警戒する「多正面作戦」を採る構えだ。蓄積したテロ対策のノウハウを生かし、万全の体制を整えるべきだ。

いたばし・いさお
 1959年栃木県生まれ。慶応大大学院経営管理研究科修士課程修了。92年に公共政策調査会。研究室長を経て2015年から現職。武蔵野大客員教授、国士舘大非常勤講師も務める。

(2023年4月18日朝刊掲載)

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