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社説・コラム

『潮流』 基地との向き合い方

■岩国総局長 岩崎秀史

 岩国市の米軍岩国基地を開放するイベントが15日に開かれ、久しぶりに訪ねた。雨天にもかかわらず6万人を超える来場でにぎわった。航空ショーや戦闘機の展示を楽しみ、飲食やグッズを買い求めていた。基地が地域にもたらす経済効果の一端を実感した。

 地元自治体も基地増強の恩恵を受ける。岩国市が国から得る基地関連の交付金や補助金は本年度67億円余り。一般会計の歳入の約1割を占める。9日投開票された山口県議選岩国市・和木町選挙区でも、県が受ける基地絡みの交付金の使い道が争点となった。

 「生活を良くするために交付金の活用を」「道路などインフラ整備の財源に」「騒音被害の軽減に使うべきだ」…。論戦を耳にして十数年前、山口県庁を担当していた時に聞いた県幹部の言葉を思い出した。

 当時、岩国基地の問題を熱心に取り上げる野党系議員が県議会にいないことを問題と捉えていた。圧倒的な勢力の自民党の意向を県は重視していただけに、意外な気がした。理由を尋ねると、「地元から厳しい指摘を受けないと緊張感が薄れる。的確な意見をもらえると国に言うべきことを強く言える」からだという。

 その頃、在日米軍再編の一環で空母艦載機を厚木基地(神奈川県)から岩国基地へ移転させる計画の受け入れを国から迫られていた。着地点をどう見いだすか、バランス感覚を保ちつつ探っていたのだろう。

 岩国基地に約60機の艦載機が移り、極東最大級の航空基地となって今春で5年になった。周辺では騒音が激増し、年2万5千回を超える。外来機の飛来や大型艦船の寄港が相次ぎ、米兵の犯罪も続く。

 問われるのは、艦載機の移転を受け入れた見返りに受け取る交付金の使い道だけではないだろう。基地を巡る問題に正面から向き合ってもらいたい。

(2023年4月18日朝刊掲載)

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