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G7、核なき世界へ連携 外相会合声明 究極の目標に 被爆地訪問 指導者に促す

 先進7カ国(G7)外相会合は18日、長野県軽井沢町のホテルで3日間の日程を終え、閉幕した。核兵器のない世界を「究極の目標」と定め、各国の関与を確認する共同声明を発表した。広島市で5月にあるG7首脳会議(サミット)まで19日であと1カ月。被爆地を訪れるよう各国の政治指導者や若者たちに促すことも声明に盛り込んだ。(樋口浩二)

 議長を務めた林芳正外相は記者会見で「G7として引き続き核兵器のない世界にコミット(関与)すると再確認した」と述べた。岸田文雄首相が昨夏に提唱した核兵器不使用の継続などの行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」については、G7外相たちから評価する声があったという。

 共同声明は、2016年に広島市であったG7外相会合と同じく「広島、長崎がかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難」を経験したことに言及。被爆地訪問を促し、軍縮・不拡散教育の重要性を説いた。

 ロシアに対しては、ウクライナからの無条件の即時撤退とともに、核戦争をしないと誓った核保有五大国による22年の共同声明を守るよう求めた。今回のG7外相の共同声明は中国の核戦力拡大への懸念も示し、保有状況などの透明性を高めるべきだと主張。東シナ海などでの軍事行動には反対した。

 18日の討議では、ロシアによるウクライナ侵攻に伴ってエネルギー・食料価格高騰に直面するアフリカの国々への対応も話し合い、偽情報や不透明、不公正な開発金融への対処を強めるとの認識を共有した。林氏は中国やロシアがアフリカへの影響力を拡大している現状を踏まえ、「G7が関与を強化し、頼れるパートナーであると示すことが重要だ」と訴えた。

 広島サミットは5月19~21日に開かれる。日本政府は、各国首脳による原爆資料館視察と被爆者との面会をサミット初日に組み込む方向で調整している。

【解説】核削減 広島で一歩を

 「核兵器のない世界」を究極の目標と位置付け、G7各国の取り組みを確認した外相会合。成果である共同声明は「核兵器数の減少は継続しなければならない」と主張する一方、具体的なアプローチは従来の政府見解の域を出なかった。来月の広島サミットは、G7首脳が被爆地に初めてそろう。核兵器の削減方法を巡る議論と正面から向き合わなければ、被爆地開催の意義が揺らぐことになる。

 外相会合の議長を務めた林芳正外相は締めくくりの記者会見で、核なき世界に向けて岸田文雄首相が提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」が各国の評価を得たと胸を張った。

 ただ、このプランは核兵器不使用の継続や核戦力の透明性を高めるのが柱で、核弾頭をどう減らすかという点では物足りない。

 それどころか、共同声明は「核抑止」を肯定した。ロシアによる核使用が現実味を帯びる今こそ、広島、長崎を超える惨禍が繰り返されるリスクを重くみて、核抑止論からの脱却を探るべきではなかったか。

 1カ月後の広島サミットでは核兵器を持つ米英仏の3首脳がそろって被爆地を訪れる。78年前の惨状に思いを巡らせ、核兵器の廃絶に向けた一歩を踏み出せるか。議長を務める首相の手腕が問われている。(樋口浩二)

(2023年4月19日朝刊掲載)

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