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連載・特集

サミットと暮らし インタビュー <2> 資源・食糧問題研究所 柴田明夫代表(71)

物価高・食料問題

輸入国で連携し発信を

  ≪全国の2月の消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は103・6と18カ月連続で上昇し、特に食料品は46年7カ月ぶりの高い伸びとなる7・8%の上昇を記録した。物価高が市民生活を直撃している。≫

 新型コロナウイルス禍や異常気象で、減産したり、輸出制限したりしていたところに、ロシアによるウクライナ侵攻が加わった。価格は峠を越したといわれるが、コロナ禍前と比べると高止まりで不安定な状況だ。物価高は世界的な傾向で、広島サミットでも抑制策は重要なテーマになる。

 食料の供給面では、貿易の自由化やウクライナの輸出促進に向けた方策の話になるだろう。ただ、先進7カ国(G7)には米国など食料を輸出している国もある。農業大国と日本が課題を共有するのは難しい。G7以外の輸入国と連携し、食料の供給不足による物価高が日本だけの課題ではないと訴えてほしい。

 ≪化学肥料の供給制約も、食料価格高騰の背景にある。チッソはロシア、リン酸塩は中国が、それぞれ輸出シェアの3割以上を占めており、輸出の制限が深刻な食料安全保障問題を起こす可能性がある。≫

 ロシアは化学肥料の生産大国だ。中国も農業大国になるために化学肥料を国内優先で供給しており、国際価格が上がる要因になっている。広島サミットで、エネルギーなどの資源や、肥料を含む資材の高騰にまで踏み込んだ対応策が話し合われるかも注目だ。

 ≪サミットを契機に、食料問題や物価高が解決へ動き出すよう期待されているが、楽観視はできない。≫

 輸入食料について言えば、値上げラッシュは避けられない状況だ。世界共通の課題であり、G7で話し合ったからといって簡単に解決できない。価格転嫁を進め、国内の物価水準自体を上げるのも必要ではないか。そうしなければ、国際的な食料争奪戦で買い負ける。

 一方で、広島サミットが、国内農業の育成につながるかどうかを見たい。日本は小さな農家が多く、国内農業を保護する立場だ。G7は自由な貿易が前提になるが、国内農業も守らなければならない。

 鍵を握るのは拡大会合に招待したインドだろう。農業の生産大国であるインドは、貧しい農家も多く、国内の中小農家を保護するという日本と同じ方向性を持っている。日本はインドをうまく取り込み、輸入国も含めた世界の食料安全保障に道筋を付けられれば、広島サミットは画期的なサミットになるだろう。(聞き手は加田智之)

しばた・あきお
 栃木県出身。東京大卒業後、丸紅に入社。丸紅経済研究所主席研究員、同所長などを歴任した。2011年に栃木県那須塩原市に資源・食糧問題研究所を設立し、代表を務めている。 (2023年4月20日朝刊掲載)

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