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被爆樹木 誤って伐採 サミット関連工事 広島県、認識なし 広島市東区

 広島県は19日、県発注の工事で、広島市東区の京橋川沿いにあった被爆樹木のシダレヤナギ1本を誤って伐採したと明らかにした。工事は広島市で5月にある先進7カ国首脳会議(G7サミット)の関連予算で進めていた。工事を発注した県の部署が被爆樹木と認識していなかった。

 県によると、委託業者が3月3日、東区牛田本町の京橋川左岸の雑木の伐採作業をしていた際、川沿いのシダレヤナギを根元から切り落とした。市民から通報を受けた市が今月18日、工事発注者の県西部建設事務所に指摘して判明した。

 シダレヤナギは爆心地の北東約2キロにあり、高さは約3メートルあった。同事務所は被爆樹木とは知らず、業者も認識していなかった。被爆樹木を登録する市も、周知用のプレートをこの木には装着していなかった。

 記者会見した県土木建築局の長田和久土木整備担当部長は「貴重な被爆樹木を伐採した。県民に深くおわび申し上げる」と述べた。 市国際平和推進部は「被爆者の高齢化が進む中、原爆被害を伝える物言わぬ証人として保存に努めてきた。なんとか再び芽を出してほしい」としている。市は今回の伐採を受け、市内に160本ある被爆樹木の所有者に保存や管理を求める文書を出すという。

 近くの派遣社員宮野泰治さん(82)は「付近を通る時に大きな木だなと眺めていた。被爆樹木とは知らなかった」と驚いた様子だった。(平田智士、伊藤友一、野平慧一)

(2023年4月20日朝刊掲載)

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