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イラン調査 冒険の半世紀 広島大考古学研究室が記念展 土器など展示「ロマン感じて」

 広島大の考古学研究室が初めてイランに学術調査隊を派遣したのは1971年。74年に第2次隊、76年には3次隊を送った。調査から半世紀。貴重な資料と研究者たちの「冒険」に光を当てる「広島大学イラン学術調査隊50周年記念展 ペルシア踏査1971」が25~30日、広島市中区のギャラリーGで開かれる。持ち帰った遺物約1万点の一端を初めて一般公開する。(渡辺敬子)

 調査隊が訪れたのはイラン北東部の遺跡群。農耕文化の始まりや、鉄器の起源を探るのが目的だった。西アジアから東アジアを経て、どのように日本へ伝わったのか―。野島永(ひさし)教授は「日本人がめったに足を踏み入れない地へ赴き、古代の謎を解明しようとした野心的な一大プロジェクト」と先達に敬意を示す。

 考古学研究室は65年開設。海外調査はまだ珍しい時代だ。マツダは初代「ボンゴ」を無償貸与し、中国新聞記者が同行するなど地元を挙げて調査隊を支えた。3次隊に参加した古瀬清秀広島大名誉教授は「初めての海外渡航で、期待と不安が入り交じった気持ちだった」と振り返る。

 歴史のうねりの中、79年にイラン・イスラム革命、80年にイラン・イラク戦争が起きる。3次隊は収集資料の国外持ち出しがかなわなかった。ただ2000年以降、現地で3次隊資料の存在が確認されるなど、研究室の志は今日に引き継がれている。

 展示は、国内有数のイラン資料の存在を知ってもらうのが狙いだ。縄文時代と同時期に作られた彩文土器やイスラム陶器の破片、麦を刈り取る石鎌や石器など遺物を展示する。現場の空気を伝える写真パネル、8ミリや16ミリのフィルムで撮った映像、野帳も並ぶ。修士2年の宇野真太朗さん(23)、竹田千紘さん(23)が1年前から準備してきた。

 イラン考古学が専門の有松唯准教授は「日本にはない珍しい土器が多い。多くの人に実物の美しさ、面白さを味わってほしい」と話す。古瀬名誉教授も「考古学のロマンを感じてもらいたい」と呼びかける。

 29日午後5時半、トークイベント「ペルシアの遺丘と物質文化 その探求と表現」がある。古瀬名誉教授、野島教授、有松准教授に桑島秀樹教授(美学)が加わり、調査の意義などを語り合う。ギャラリーG☎082(211)3260。入場無料。

(2023年4月22日朝刊掲載)

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