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連載・特集

サミットと暮らし インタビュー <4> 東京都立大 詫摩佳代教授(41)

感染症

国際協力推進 リードを

  ≪新型コロナウイルスへの対応を巡り、国際社会では米国と中国が批判の応酬を重ねた。途上国にワクチンが行き渡るのも遅れた。≫
 各国のリーダーにとって、コロナ対応の成否は国民の支持に響く。そのためワクチンを独占しようとしたり、責任の所在を他国に求めたりする国が出てくる。だが、ワクチン独占は人道的に問題であるばかりか、世界規模での収束を遅らせ、回り回って先進7カ国(G7)の国民の健康や生活を脅かすことになる。

  ≪岸田文雄首相は1月、英国の医学雑誌への寄稿文で、国際保健の枠組み強化や、すべての人が手の届く価格で医療を受けられる仕組み作りを提言した。≫
 世界保健機関(WHO)では、次の感染症流行に備えた新しい条約や国際保健規則の改正などの議論が進んでいる。G7には、こうした国際協力の基礎になるルールや規範の見直しをリードする役割を求めたい。

 国民皆保険の日本は、新型コロナでも所得に関係なく検査や治療を受けられる仕組みにした。しかし、国によっては富裕層か否かで差がついた。今回のサミットを、日本の考え方を広げる好機にしてほしい。

  ≪2021、22年のサミットでは、ワクチンの早期開発や公平な分配を進める考え方で一致した。≫
 21年のサミットでは、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから100日以内にワクチンを利用可能にする「100日ミッション」の目標を定めた。実現には、研究開発を加速するための資金確保が不可欠だ。今回のサミットでは、資金を国際的に調達する方法を具体化させ、10年、20年先へと続く仕組みを作れるかが、鍵となる。

  ≪日本はサミットを前に、新型コロナの感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる。欧米でも既に多くの国が規制緩和に踏み切っている。≫
 G7にとって、新型コロナは既に過去の問題になりつつある。だが、今回の流行が終わっても、感染症を媒介する蚊の生息域が気候変動により拡大したり、紛争で不衛生な環境が生まれたりするなど、リスクが高まっている時代だ。

 パンデミック(世界的大流行)への対応は「お上がすれば良い」問題ではない。市民にもできることはある。その一つが、国際的な感染症の封じ込めに取り組む指導者を選ぶことだ。G7が何を決め、その中で議長国の日本がどうリーダーシップを取るか、注目してほしい。(聞き手は下高充生)

たくま・かよ
 呉市生まれ。東京大大学院博士課程単位取得退学。首都大学東京(現東京都立大)法学政治学研究科准教授などを経て2020年から現職。在外研究で23年4月からフランス国立社会科学高等研究院(EHESS)訪問研究員。専門は国際政治・グローバル保健ガバナンス。

(2023年4月22日朝刊掲載)

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