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被爆樹木の息吹感じて 南区の藤原さん 写真集出版

 広島市内の被爆樹木を記録した写真集を南区宇品御幸のカメラマン藤原隆雄さん(73)が自費出版した。惨禍を生き抜いた木々の姿から平和の価値を感じてもらおうと撮影し、5月に市内である先進7カ国首脳会議(G7サミット)加盟国やロシア、ウクライナなどの駐日大使館に送った。

 「被爆樹木 広島~生きる」のタイトルでA4判、160ページ。現存する約160本を全て撮影し、比治山公園(南区)のクスノキの大木や平和記念公園(中区)のアオギリなど約120枚を掲載している。

 「どの木々にも力強い生きざま、物語を感じられた」と藤原さん。広島城跡のクロガネモチの幹には二つのこぶがあり、原爆投下後の混乱の中で赤ん坊に乳を飲ませようともがく母親の姿に映ったという。根元から生えたひこばえにも「孫のよう」と慈しむようにレンズを向けた。

 藤原さんは写真館の経営や地元の宇品地区のまちづくり活動の傍ら、弥山(廿日市市宮島町)の撮影などをライフワークにしている。その腕を買われ、2017年春、広島東南ロータリークラブ(中区)から被爆樹木の撮影を依頼され、3年がかりで取り組んだ。ロータリークラブ主催で写真展が開かれた後、広く作品を知ってもらおうと自費出版を思い立った。

 3月末発行の写真集の末尾には核保有国に伝わるようにと知人の言葉で「原子爆弾は広島と長崎に落とされたのではありません。人類の上に人類自らが落としたのです」と日本語と英語のメッセージを添えた。

 千部発行。「子どもたちの平和教育にも役立ててもらいたい」と一部の小中学校にも寄贈した。希望者には5千円で譲る。藤原さん☎090(3637)2013。(岸慶太)

(2023年4月25日朝刊掲載)

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