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安佐北の迫田さん 「伝承者」から移行 黒い雨「証言者」の決意 国の新基準で昨春被爆者認定 「仲間の思い 伝えたい」

 広島原爆の投下後に降った「黒い雨」を巡る国の新たな認定基準で、昨年4月に被爆者に認定された迫田勲さん(85)=広島市安佐北区=が25日、「被爆体験証言者」として活動を始めた。これまで「被爆体験伝承者」として別の被爆者の記憶を語り継いできたが、今後は自らのあの日の体験を基に核兵器がもたらす惨禍を伝えていく。(小林可奈、和多正憲)

 「広島の方面の山の上がピカーッと光り、ドーンという地響きのような音が聞こえた」。この日、中区の原爆資料館で、被爆体験証言者として初の講話に臨んだ迫田さん。7歳の時、当時の小河内村(現安佐北区)で黒い雨に遭った経験を山梨県から訪れた中学生たち約10人に身ぶりを交えて語った。「黒い雲がもくもくと上がり、すす混じりのねっとりとした雨が降ってきた」

 迫田さんは被爆者の証言を第三者が語り継ぐ被爆体験伝承者として2020年度から活動。援護対象を広げる国の新基準導入で昨年4月に被爆者と認められ、証言者を目指すことにしたという。伝承者から移行する形で、講話の原稿作りや話し方を学ぶ研修を経て今年4月に任命された。

 生徒たちに証言する中で、迫田さんは両親を原爆に奪われた同級生の存在に触れた。国民学校時代からの友人ながら、80歳で亡くなる直前に、初めて原爆への苦悩や孤独を打ち明けられたという。「この友人の苦しみや、黒い雨に遭いながらも長年被害が認められなかった人たちの思いを伝えたい」と決意を新たにした。

(2023年4月26日朝刊掲載)

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