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東日本大震災から3年 広島で夢 福島から避難 沼田高の女子生徒 美容の道へ

 広島県内の大半の公立高校で卒業式があった1日、東京電力福島第1原発事故の後、福島県いわき市から広島市安佐南区に家族で避難してきた女子生徒(18)も、2年余り通った沼田高を巣立った。「温かく迎えてくれた広島。ここで夢をかなえたい」。恩師や友人との思い出を胸に4月から広島文化学園短大(同区)に進み、美容のプロを目指す。(永里真弓)

 講堂であった卒業式。300人余の卒業生とともに緊張の面持ちで臨み、校歌を斉唱した。教室での最後のホームルームで、担任(39)から卒業証書を受け取った。「広島に来てとても不安だったけど、みんなが優しくしてくれた。今ではこのクラスがすごく好き。ありがとうございました」。級友34人の前で涙があふれた。

 いわき市で生まれ育った。3年前のあの日は、中学校の卒業式だった。晴れの日は激しい揺れで一変。母校の体育館に一時避難した。原発が爆発し、家族5人で車に乗り込み約100キロ離れた会津若松市まで逃げた。4月から地元に戻り私立高に進学したが、放射線による健康影響の不安はぬぐえない。広島市の支援グループの招きで保養に訪れた縁で母(38)、弟2人とともに2012年1月、同市に引っ越した。

 新生活を支えてくれたのが級友や恩師たちだ。「一緒に弁当食べよう」。少しの気遣いがうれしかった。進度が違った数学の勉強に担当教諭が放課後も付き合ってくれた。「学校生活が少しずつ楽しくなった」

 広島に来てはっきりしたのがメーキャップアーティストになる夢。多くの若者でにぎわう広島なら実現できるという意を強くした。

 今春、母と弟2人は、父(40)が残るいわき市に戻る。女子生徒は広島での進学を選んだ。「震災直後の避難生活はつらかったけど、広島に来て将来の可能性が広がった。夢をかなえ、支えてくれたみんなに恩返しをしたい」

 涙を拭いた。瞳が輝いた。

 県教委によると、県内の公立高の今春の卒業生は計1万6146人。被災地から避難している大竹高の生徒1人も卒業を迎えた。

(2014年3月2日朝刊掲載)

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