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「ゲン」の次は被爆樹木 石田監督 児童書執筆へ取材 復興への生命力テーマ

 東京在住の映画監督、石田優子さん(35)が、広島の被爆樹木をテーマにノンフィクションの児童書を書き進めている。漫画家の故中沢啓治さんを取り上げたドキュメンタリー「はだしのゲンが見たヒロシマ」(2011年)を監督したのを機に、「原爆についてもっと記録に残したい」と思うようになったのがきっかけ。樹木医をはじめ被爆樹木に関わる人たちへの取材を重ねている。(増田咲子)

 東京出身の石田さんが被爆樹木について知ったのは大学生だった10年以上前。平和記念公園(中区)の被爆アオギリの下で聞いた故沼田鈴子さんの被爆証言だった。原爆の閃光(せんこう)を浴びながら力強く生きる姿が人々の心の支えになった点などに興味を持ち、1年ほど前から再三、広島を訪れている。

 2月下旬も、中沢さんの漫画「ユーカリの木の下で」に登場する広島城(中区)のユーカリを訪ねた。原爆に耐え、新芽を吹いた生命力について描く。被爆樹木を守り続けている樹木医の堀口力さん(68)や、被爆樹木の種や苗を世界各地に届けている市民グループの渡部朋子さん(60)らとの出会いも紹介する。

 広島市によると、爆心地から約2キロ以内にあり原爆投下の前から生えていた被爆樹木は約170本。被爆の実態を伝えてくれる「生き証人」でもあり、傷つきながら、たくましく成長する姿は原爆によって焼け野原となった広島の人たちに生きる勇気や復興に向けた希望を与えた。

 石田さんは「被爆樹木が見つめてきた焼け野原からの復興や、命の大切さを知り、平和な未来について考えるきっかけにしてほしい」と話す。出版社に勤める友人の勧めで執筆を決め、映像化も検討している。

 本は「ひろしまの被爆樹木に会いに行く(仮題)」として120ページ程度にまとめ、今年中に偕成社(東京)から出版する。被爆樹木にまつわるエピソードなど情報提供も呼び掛けている。石田さんTel080(9506)1778。電子メールhibakujumoku@gmail.com

広島市の被爆樹木登録制度
 市は1996年度から、地元住民の証言や樹木医の確認といった裏付けをしたうえで被爆樹木の登録を始めた。一般の人が立ち入りできない個人宅を除き、公園や寺、神社など54カ所に約170本(2月末現在)が残っている。樹木の種類は、アオギリやエノキなど31に上る。

 市は、被爆時の状況などを記した説明板を取り付けているほか、根腐れを防いだり害虫を駆除したりと「治療」も実施。枯れてしまった木もあるが、個人宅から小学校に移植され、新たに登録された例もある。

(2014年3月3日朝刊掲載)

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