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[広島サミット5・19~21] 軍都支えた宇品・似島 似島平和資料館 2周年で企画展 ロシア兵捕虜収容解説

 広島市沖の似島(南区)にある「似島平和資料館」で、日露戦争中に旧日本軍の捕虜となり島に収容されたロシア兵がテーマの企画展が始まった。地域住民らで運営する同館は、今月で開館2周年。5月に対岸の元宇品町(同)のホテルを主会場に先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれるのを機に、宇品地区と似島が一体となって戦前の「軍都広島」を支えた歴史を伝える。(湯浅梨奈)

 似島では日清戦争中の1895年、戦地から帰還した兵士が伝染病を持ち込むのを防ぐため、陸軍が世界最大級の第一検疫所(現似島学園)を設置。日露戦争中の1904年には第二検疫所(現似島臨海少年自然の家)ができた。ロシア軍捕虜もここから日本各地の収容所へ移送された。

 展示しているのは、似島に収容された少将の顔写真や中国大陸で撮影された捕虜たちの写真計15点と、ロシア兵捕虜の急増を受けて似島にも収容された経緯があることなどを解説する資料約10点。資料は「似島歴史ボランティアガイドの会」の宮崎佳都夫会長(75)が執筆した。ロシア兵が週3回の入浴を喜んでいた様子や、将校が昼食に焼き肉やサンドイッチを食べていたエピソードなども記す。

 45年に原爆が投下された直後から、似島には負傷者約1万人が運び込まれた。後に行われた広島市の発掘調査で遺品や遺骨が多数見つかった「慰霊の広場」に立つ同館は、市の補助金で建設費を賄い2021年4月にオープン。原爆犠牲者の遺品など約100点を常設展示している。

 宮崎さんは「似島にロシア軍捕虜がいたことはあまり知られていない。平和発信のシンボルとなっている広島の戦前と原爆被害の歴史の両方を学んでもらいたい」と話す。展示は6月末ごろまで。見学は事前予約制。ウェブサイトで受け付けている。https://guide.ninoshima.org/

(2023年4月28日朝刊掲載)

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