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自筆文書 広島大へ寄贈 原水爆禁止運動けん引 故森滝市郎さん

 被爆者として原水爆禁止運動を引っ張った広島県被団協初代理事長の森滝市郎さん(1994年に92歳で死去)の資料が、次女の春子さん(84)から広島大(東広島市)へ寄贈される。27日は、広島市佐伯区の自宅書斎に残っていた市郎さん自筆の文書を広島大文書館が運び出した。運動の歩みをたどる貴重な記録として研究に生かす。

 文書館の石田雅春准教授たち4人が、ほぼ生前のままの書斎から自筆の原稿や書簡などを11箱に詰め込み、搬出した。石田准教授によると、亡くなるまで手元にあったため、市郎さんの思想や行動の核心に迫る上で学術的価値が高いという。初期の原水禁運動の関連資料が見つかる可能性もあり、「政党の対立で運動が分裂する中、森滝さんがどう悩み、行動したか明らかにしたい」と話した。

 文書館は2018年2月から自宅倉庫などの資料を順次運び出し、これまでに約1万点を収集。第五福竜丸が被曝(ひばく)した54年のビキニ事件を契機とした原水爆禁止の署名運動に関する直筆原稿などを確認した。

 市郎さんが教授を務めた広島大への寄贈を決めた春子さんは「父の生き方を示す資料を振り返り、核戦争の危険が迫る今の危機的な状況を乗り越える力にしてほしい」と話した。文書館は目録を作り、数年後に一般公開する。(宮野史康)

(2023年4月28日朝刊掲載)

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