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追悼込めて「黒い雨」歌う 訴訟に尽力 故広島弁護士しのぶ 3日の憲法劇ステージで

 「あの日の黒い雨が/私を変えてしまった/核兵器はいらない」―。憲法記念日(3日)にミュージカル憲法劇を広島市で上演してきた広島憲法集会実行委員会は今年の舞台で、「黒い雨」と題した歌を特別のパートを設けて届ける。劇の脚本を長年手がけ、昨年9月に77歳で亡くなった広島敦隆弁護士が作詞した。黒い雨訴訟の弁護団長も務めた広島弁護士を追悼し、憲法への思いを受け継ぐ決意を込める。

 憲法集会での劇上演は1994年に始まり、広島弁護士が脚本を担当。その時々の話題や世相を取り込み、シナリオ集も刊行した。病気と高齢のため2019年から、東京で劇団を主宰する典門沙美(のりかどすなみ)さん(34)が引き継いだ。

 今年は、新型コロナウイルス禍による延期や縮小を挟み、4年ぶりに県民文化センター(中区大手町1丁目)で開く。同性間の恋愛や宗教2世の問題を扱った劇「広島・天使のうた」を上演。典門さんは「『憲法問題を誰にも分かりやすく』と願った広島先生の思いを受け継ぎ、とりわけ若い人に響くテーマを選んだ」と話す。市内の10代が主役級を担う。

 広島弁護士は、原爆の放射性物質を含んだ黒い雨を浴びたのに被爆者健康手帳の交付申請を却下したのは違法として、県内の84人が県や広島市に却下処分の取り消しを求めた黒い雨訴訟で弁護団長を務めた。高齢の原告たちを元気づけようと作った歌が「黒い雨」という。訴訟は、原告側全面勝訴とした広島高裁判決が21年に確定した。

 作曲を依頼された実行委員の平井充晴さん(50)は「弁護士としての熱意に加えて文学の素養も豊かで、劇の脚本にも生きていた」としのぶ。

 午後2時開演。志田陽子・武蔵野美術大教授の講演もある。2800円(前売り2500円)、中高生1800円(同1500円)。石口法律事務所☎082(222)0072。(道面雅量)

(2023年5月1日朝刊掲載)

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