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社説・コラム

社説 広島サミット 警備と市民生活 規制の情報きめ細かく

 先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が近づいたと実感する。広島市中心部の警備が物々しい。テロ行為の抑止を図る「見せる警備」で制服警察官が増えた。メイン会場のホテルがある元宇品や平和記念公園の一帯は、フェンスで囲われた。

 緊張感が高まるのは当然だろう。G7首脳だけでなく、拡大会合には20カ国・地域(G20)の議長国インドや地域を代表する国々のトップを招く。国際社会はロシアのウクライナ侵攻という戦争下にある。あらゆるテロ、サイバー攻撃などの可能性は否定できない。

 しかも安倍晋三元首相が銃撃されて死亡する事件に続き、先日は岸田文雄首相を目がけて爆発物が投げ込まれた。要人警護では教訓を生かし、警護官と現場警備の連携を徹底したい。日本におけるサミットは近年、保養地を会場としてきたが、今回は都市での開催だ。警備の難易度は上がる。引き続き万全の体制で臨んでほしい。

 期間中の警備は、要人の移動に伴う沿道対策が鍵となろう。地域や市民、企業などとの連携が重要なのは言うまでもない。

 とりわけ交通規制は、これまでになく大掛かりだ。5月18~22日の5日間、一般道は国道2号や平和大通りの一部などが対象で、高速道は広域にわたる。通行止めとするのは首脳らが移動する時間帯に限るという。

 混乱を防ぐためには、きめ細かい情報が欠かせない。

 広島県警は前日に大まかな規制区間と時間帯を公表し、直前にツイッターなどで詳細を知らせる。首脳の移動は機微な情報ではあるが、可能な限り速やかに出してほしい。規制が長時間にわたるケースや渋滞発生もあり得る。現場の警察官らによる広報や誘導も徹底すべきだ。

 広島県などは交通量を通常より50%減らそうと、市民らにマイカー利用の自粛を求めている。路線バスや路面電車も減便する。こうした交通規制がなされれば、市民生活の制限が多岐にわたるのは必至である。学校の休校、企業の休業、ごみ収集日の変更などが、相次いで公表されつつある。

 生活や仕事にどれほどの影響があるのか。多くの市民の関心はそこにあろう。不明な点が多く、不安も強い。制限はやむを得ないとしても関係機関にバランスある対応を求めたい。そして市民目線に立ち、できるだけ多く情報を発信してほしい。

 弱い立場の人たちへの配慮も忘れてはならない。急病人への対応は万全か。高齢者の通院や買い物に支障はないか。サミット開催を知らず訪れる外国人観光客がいるかもしれない。

 市民を巻き込むテロのリスクへの対応も問われる。先日、JR広島駅内の商業施設で不審物が見つかり、避難する騒ぎがあった。危険のない落とし物と判明するまで万が一を考え、慎重に対応したのは、人が集まる駅や施設などを無差別に狙うテロが実際に起こってもおかしくないからだ。警備の意味を丁寧に説明してこそ、より安全な行動を促せる面があるはずだ。

 サミットを広島で開く重みを改めて踏まえたい。世界のリーダーが原爆の惨禍に触れる意義は大きい。長い目で見れば観光や広島の発信にプラスの効果も期待される。それぞれが、できる範囲で協力を心掛けたい。

(2023年4月30日朝刊掲載)

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