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「黒い雨」救済 23人提訴 広島地裁 新基準導入後 初めて

 広島原爆の投下後に降った「黒い雨」の被害者救済を巡り、国が昨年4月に運用を始めた新たな被爆者認定基準の下で被爆者健康手帳を申請し、却下されるなどした広島県内の23人が28日、県と広島市に却下処分の取り消しなどを求める訴訟を広島地裁に起こした。新基準を踏まえた集団提訴は初めて。

 70~90代の23人は現在の廿日市市吉和や広島県北広島町大朝、広島市安芸区などで雨に遭ったとして手帳を申請した。16人は却下され、4人は未処分のまま審査が長期化。残る3人は被爆者と認定されたものの、手帳交付日の前倒しを求めている。

 黒い雨を巡っては、広島高裁が2021年7月、国が主張する従来の援護対象区域より広範囲に雨が降った可能性があると指摘。がんなど11疾病のいずれかの有無を問わず原告84人全員を被爆者と認定し、被害者の救済拡大を命じた。

 一方、判決を受けた新基準では11疾病を交付の要件として維持。「黒い雨に遭った可能性を否定できないこと」も要件としたが、市によると、審査では過去の調査で雨が降ったとされる区域を参考にしているという。

 原告側は訴状などで、雨が降ったと認める範囲を広げるよう求め、11疾病を要件とする新基準は違法と主張している。

 県と市によると、高裁判決後、今年3月末までに申請のあった計4696人のうち184人が却下となった。県と市はそれぞれ「内容を確認した上で国と協議し、丁寧に対応したい」などとコメントした。(堅次亮平)

(2023年4月29日朝刊掲載)

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