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「浴びた人には認定を」 「黒い雨」救済 集団提訴 原告ら新基準の問題点指摘

 「黒い雨」の被害者救済の拡大を求める新たな闘いが28日、始まった。広島地裁に提訴した原告団と弁護団は広島市中区で記者会見し、1年前に運用が始まった被爆者認定基準の問題点を指摘。「雨を浴びた全ての人を認定すべきだ」と訴えた。

 「一人でも多くの人が被爆者手帳をもらう制度にしましょう」。原告団長の岡久郁子さん(82)=西区=は会見で声を大にした。

 岡久さんは4歳の時、佐伯郡砂谷村(現佐伯区)で雨を浴びた。黒い雨被害者の救済拡大を命じた2021年7月の広島高裁判決の3カ月後、市に手帳交付を申請したが1年後に却下された。疾病要件を満たさないとされたのだ。「(疾病を問わず)直爆や入市被爆、救護被爆は当時いた場所で被爆者と判断される。なぜ黒い雨は違うのか」

 昨年4月に運用が始まった新基準は従来通り、がんなど11疾病のいずれかにかかっていることを被爆者認定の要件とした。援護対象区域は拡大したが、審査では過去の調査で示された三つの降雨区域を判断材料にしている。その外で雨に遭ったとの主張はほぼ退けているのが実態だ。

 原告の一人、大畑忍さん(87)=西区=は佐伯郡友和村(現廿日市市)で雨を浴びたことが確認できないとされた。「当時近くにいた人の多くが、雨が降ったとはっきり言っている。不十分な調査で雨の降った区域で区切るのはおかしい」と憤る。

 弁護団長の足立修一弁護士は「状況やその後の人生をみれば、原爆が広範囲に被害を及ぼしたのは明らかだ。裁判で訴えたい」と強調した。(堅次亮平)

(2023年4月29日朝刊掲載)

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