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「妻の貌」全国上映 被爆者家族の歴史紡ぐ 映像作家川本さん

■記者 里田明美

 被爆者の妻を描く代表作「妻の貌(かお)」の全国上映が決まった広島市佐伯区のアマチュア映像作家川本昭人さん(82)が、先行上映が始まった広島市西区の横川シネマで、作品への思いを吐露。「二人で作り上げた映像。反核の願いをくみ取ってほしい」と話した。

 1958年から一昨年までを記録した作品の主人公は、被爆の影響と思われる甲状腺がんを患いながらしゅうとめの世話をする妻キヨ子さん(83)だ。酸素吸入をしながら家事をこなし、孫の誕生を喜び、しゅうとめの思いやりに涙する。しかし、時には8ミリカメラを向ける川本さんに怒りもぶつける。

 「平凡な家庭を追い、妻のさまざまな表情を切り取ることで、ヒロシマを描こうと思った」。撮影を嫌がるキヨ子さんの姿もそのまま収録。「カメラを向けることはその人に接近することで、愛情表現。作品の意図を正確に伝えるためにも欠かせなかった」と話し、家族の歴史を紡いだ作品への思いを打ち明けた。

 「少しは人間の生きざまが描けたでしょうか」と川本さん。「妻の貌」は8月7日まで同劇場で上映。11日の午後3時と6時には市映像文化ライブラリー(中区)で、「妻の貌」の基となった「私のなかのヒロシマ」など川本さんの6作品を上映する。

(2009年7月9日朝刊掲載)

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