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社説・コラム

天風録 『ペチュニアの花言葉』

 月替わりのきのう、広島県内は文字通り五月晴れとなった。広島市中区の平和大通りでは県外ナンバーの車が目立った。帰省客にとって、マスクなしで古里の空気を吸えた気分はどんなだろう▲ただ大型連休の名物、ひろしまフラワーフェスティバルは6月に先延ばしされた。「花の塔」がそびえる辺りには花文字が並ぶ。〈G7 HIROSHIMA〉。鉢植えが11文字を浮かび上がらせている。今咲き匂うのは、朝顔にも似たペチュニア▲花屋さんから教わったことがある。母の日にペチュニアがもてはやされる訳は、その花言葉にあると。「あなたと一緒なら、心が和らぐ」▲ぐっとくるメッセージを今なら、格差や分断の進む国際社会にも届けたくなる。何かと言えば、白か黒かをつけたがり、敵か味方かとせっつかれる。二分法の世界は、とかく生きにくい▲分断の溝は、ロシアによるウクライナ侵略で一層深まりつつある。千葉県市川市が公募する文学賞で先日、川柳部門の大賞を取ったのは中学2年生の句だった。〈ペチュニアを2つの国へ送りたい〉。両国をはじめ、世界各国に「あなたと一緒なら…」と橋渡しできるか。G7議長国日本の荷は軽くない。

(2023年5月2日朝刊掲載)

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