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連載・特集

みんなでサミット <1> 通訳ガイド

 広島市では初めてとなる先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開幕が迫ってきた。19~21日の会期に合わせ、世界の政治リーダーだけでなく、政府関係者やメディアの記者たちが大勢訪れる。もてなしや開催支援に取り組む人たちを紹介する。

世界へ発信 喜びと手応え

 新型コロナウイルス禍で遠のいていた外国人旅行者の姿が戻ってきた広島市中区の平和記念公園。4月下旬、「ひろしま通訳・ガイド協会」(HIGA、中区)の全国通訳案内士が原爆ドーム前で、米国などからのツアー客約40人に「被爆前は広島県産業奨励館だった」と英語で説明していた。その間にはアジア系の旅行者や団体も立ち寄り、多言語が飛び交った。

 「SNS(交流サイト)で手軽に情報を得られる時代なのに、ガイドを頼む人は増える一方。ありがたい」とHIGA事務局長の今田裕子さん(60)=中区。相次ぎ舞い込む各種言語のガイド依頼をさばき、自身も英語で案内して回る。

 訪日客の通訳とガイドを同時に担う国家資格の全国通訳案内士。HIGAは30~80代の会員約240人を抱え、ドイツ語、イタリア語を含むG7の各言語に対応できる。広島サミットでは関連の海外メディア向けツアーや各種行事で通訳し、案内冊子の翻訳も手掛けている。

 そのまとめ役を担う今田さん。「日本は原爆を落とされた国。訪れた人たちに何かを伝えたい」との思いを胸に活動してきた。

 原爆で祖母と伯母を亡くしている。ただ、原爆ドームや原爆資料館を案内する際は自分の感情を交えず、事実だけを伝えるよう心掛ける。国や地域によって原爆の受け止め方は違うと思うから。それでも熱心に質問され、「広島は来るべき所だ」との感想をもらうと、「原爆被害の実態や復興の歴史が伝わった」と手応えを感じる。

 親切、優しい、まちがきれい―。国内外を問わず、旅行者たちが広島に抱く印象は同じだという。「こうした、みんなの『おもてなし』がまちの財産」と今田さん。サミットを通じ、ヒロシマの魅力も平和への思いも、余すところなく世界へ伝わるよう支えるつもりだ。(野平慧一)

(2023年5月2日朝刊掲載)

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