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連載・特集

ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 戦争の結末に想像力を 大学生 高垣慶太さん(20)=東京都

 ≪核兵器廃絶へ行動する広島市安佐南区出身の大学生。昨年6月、オーストリア・ウィーンであった核兵器禁止条約の第1回締約国会議に赤十字国際委員会(ICRC)のユース代表として出席し、意見を表明した。広島の若者と共に世界の核被害者について学んでいる。≫

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 僕の活動の原点は、広島、長崎の2人の曽祖父の存在だ。ともに医師で、原爆投下直後の広島と長崎で救護に当たった。当時、子どもを含む多くの人たちが治療も受けられないまま亡くなった。こんなことは、もう二度と起きてほしくない―。筆舌に尽くし難い経験をした曽祖父たちは、誰もが人間らしくいられる社会を望んだはずだ。その使命を託されたと思い、僕は行動している。

 戦争が起きると、被害者と加害者の二項対立に陥ってしまいやすい。だが、ウクライナに侵攻しているロシアの兵士たちが亡くなっているように、戦禍では誰もが被害者となり得る。広島の被爆者が放射線被害や差別、偏見に苦しんできたように、被害者の苦悩は続く。誰もがなり得る被害者それぞれの苦悩に、もっと敏感にならないといけない。

 知らない間に戦争に加担していることだってある。被爆者の方々は言う。いかに自分たちが無批判に無心に、国家の言うことを信じてきたかと。その恐ろしさを、僕たちは何度も何度も思い返さないといけない。戦火がやまない今だからこそ、戦争の結末を知る努力が必要だとも思う。

 どうすれば、この世界で人々が共に生きていけるのか。僕たちは考えていく必要があるし、そのためには想像力と共感力も求められる。一人一人の戦争被害者がどんな体験をし、どんな思いをしたのか知り、考えていくのが大切ではないだろうか。僕が、曽祖父の経験を通じて、戦争や核兵器に思いを巡らせ、行動するように。(聞き手は小林可奈)

(2023年5月8日朝刊掲載)

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